クラウドソーシング系翻訳を始めました。その悲しい結末とは。

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2010年に海外に拠点があるクラウドソーシング系翻訳サイトのテストに通り(合格率は10%程度だそうです)、登録していましたが、あまりにも単価が低いので3万円ほど稼いでからリタイア。最近その会社からメールが来て、まだ登録されたままであることを知り、久しぶりにその会社のサイトを見たところ、日英翻訳の料金が昔は日本語1字3円だったのが5円に上がり、それに合わせて翻訳者への報酬も日本語1字$0.013から$0.02にアップ。2セントということは今の為替レートだと日本円にして2.25円程度。私は日英翻訳を「18~20円/1字」で引き受けているので1/8以下の報酬ということになります。相変わらず報酬が安すぎますが円安で昔よりもは1.5倍くらいにはなっているし、安価が売りのクラウドソーシングサービスなんだから、翻訳の質も完璧でなくていいんだし(どうもこの判断が間違えていたようです(-“”-;) )、これは通常の意味での「翻訳」ではなく、「逐語通訳」と思えば短時間に大量に翻訳することも可能です。日本語400字を英訳すれば900円。鈍足翻訳家の私でも「これは通訳なんだ」と思い込めばできない数字ではありません。

ということで再度挑戦しました。

結果は2週間で4万円近く稼いだら、何度も修正依頼をしてくる面倒な顧客から5点満点1点という評価をもらい、その3日後に翻訳会社からメールが来ました。

 

 

わわわ( ゚д゚) ・・・ 。

翻訳・校正会社なんだから「あなたのスタンダード日本語としての資格を取り消し、英語とさせていただくことになりました。」というわけのわからない文章のメールを送ってほしくありませんが、とにかく追い出されたというのはわかります。うーむ、やはり逐語通訳レベルで翻訳をしたらだめなのか。以下、クラウドソーシング系の超低価格翻訳サイトについて思ったことです。ちなみに私の記憶はうろ覚えなこともあり、間違っている箇所があるかもしれないので、どの翻訳会社かは伏せておきます(万が一誤情報だとその会社にとって信用棄損になりますからね)。

 

◆クラウドソーシング系翻訳とは

無償または低額報酬を条件として、不特定多数の人たちに仕事を外注することをクラウドソーシング(crowdsourcing)と言います。翻訳においては、誰もがこの外注に応募できる場合と、翻訳試験に通った人たちのみ参加できる場合の2種類があります。顧客側からすれば後者の方がはるかに安心できますが、前者の方がさらに料金は安くなります。ほとんどの翻訳会社はクラウドソーシングに頼っていません。トライアルという翻訳試験を実施し、試験に合格したものだけを翻訳者として登録し、彼らに仕事を依頼します。クラウドソーシングであろうがなかろうが、翻訳会社が関わってくるので、依頼者が支払う翻訳料金すべてを翻訳者がゲットすることはありません。通常は翻訳料金の3割から5割程度で、5割以上だとかなり良心的な会社といえます。

 

 

 

クラウドソーシング系はやっぱり無理無理

2.5円/1字で十分に稼ぐことが可能なのか。ちんたらやっていたらコンビニ店員より時給は低くなります。そこで目標を時給1,600円に設定して挑戦しました。まず400字程度に小分けしてストップウォッチを20分にして400字を一気に翻訳します。5分ほど休憩して同じことの繰り返しです。これを3時間以上続けると集中力が途切れてペースが落ちるので5千円以上稼いだら強制ストップを翌日に回します。5千円以上の案件だと納期が一日以上になるので翌日に回しても大丈夫です。400字/20分というのは目標なので実際には殆どがそれ以上時間がかかります。そのため実際の時給は1,200円くらいでした。それが高いか安いかですが、暇な時間にできるので暇な時間が有り余る人には悪くない仕事ではあるかなと思いました。自宅でできるし、報酬の支払いも申請して2週間以内には払ってくれるので、今月は家計が苦しいという人にはお勧めです。

でも私には無理でした。この条件で翻訳会社の期待に沿うレベルの翻訳はまったく無理です。理由は2つあります。

①翻訳料金が低すぎる

ゆったり翻訳できるのであれば難なくネイティブレベルの英語を書けますが、じっくり考えたり調べる時間がないとやはりネイティブとの差が出てきます。1字2.25円のこの会社はたまに抜き打ちで英文をチェックされるのですが、指示形容詞のtheseの後に続く名詞を単数形にしてisと続けた文の間違いを指摘されたときに、自分には高速翻訳は無理だということを悟りました。二、三回読み直せば簡単にチェックはできるのですが、これだけ単価が低いと読み返す気も起きません。グラマー・チェッカーで一度スペルと英文法のチェックをして問題なければ即提出です。本当のネイティブであればこんなバカな間違いをまずしないでしょうから、いい反省材料にはなりました。ちなみにこの会社はネイティブ翻訳者が担当するということになっていますが、私はネイティブではありません。そもそも英語ネイティブの人が漢字だらけの原文を理解できるわけないでしょう。ん? いま気づいたのですが、私は日本語ネイティブということ? それだと虚偽ではありませんね。

このクラウドソーシング翻訳で何が恐怖かというと、依頼者から修正希望が出ることです。400字でたった2千円しか払ってないのに細かく注文をしてきて、さらにそれが的外れな内容だと、どうしようもなくなります。単価が低いので依頼者と内容に関してやり取りする時間を作る余裕もありません。というか、やりとりがちゃんとできないようになっています(顧客と翻訳者がダイレクトでやり取りをすると次回から翻訳者に仕事を取られる危険性があるため)。クラウドソーシング系に限らず、翻訳会社による翻訳業は依頼者と翻訳者の交流を絶たせることで成り立っています。これがいろいろ問題を引き起こします。

②顧客とやりとりができない

依頼者とやりとりできないと完璧な英訳をすることは不可能です。日本語を英語に訳する際に生じる一番大きな問題は、原文の日本語が拙劣で意味が通じなかったり、複数の解釈を許す場合です。依頼者に意味の確認をしないと正確に翻訳しようがありません。「〇〇は△△という意味でよいのか」とEメールで質問してもいいのですが、これだと返事が来るまで翻訳を続けられません。そこで私の場合は、この意味だと目星をつけて最後まで訳して、訳文といっしょに、複数の解釈を許す英文に関しては「〇〇という文章を、△△という意味で訳したが、□□という意味にもとれる。この訳で大丈夫ですか」というコメントをつけます。そして修正してほしいという返事が来れば直します。日本語を正しく書けない人は意外と多くて、私の顧客は大学関係者ばかりなのですが、それでも依頼の2割くらいは和文に問題があるという感じです。一番多いのは複数の解釈を許す文章を書いてしまうということです。例えば、「AのBとCのD」は「①AのBと②CのD」なのか「Aの<BとCの<D」のどちらかわからないことが多いです。次に多いのは、日本語では主語が省略されることが多いので、依頼者とやりとりをしないと主語が何かわからない場合です。特に多いのは、主語がIもくしはWeのいずれかがわからないケースです。また、主語と述語がずれている文章にもよく出くわします。日本語は主語と述語が離れがちなので「この研究の目的は」の後に長々と文章が続いて、最後に「目的とする」といったおかしな文章を書く人をたまに見かけます。こういう文章は複数の解釈をする余地はないので英訳するのは簡単なのですが、不自然な日本語を見つけたら、訳文と一緒に提出するコメント欄にちゃんと指摘するようにしています。「日英翻訳」は日本語を直す作業も伴っているわけです。

また、日本語で言わんとしていることは明確であっても、直訳調に訳すと英語の文章が硬過ぎたり、不自然になる場合は、構文的に原文とかなり離れた英文を書くこともありますが、直訳調の方が良いという依頼者もいるので、超訳した箇所についてはその旨を説明する必要があります。というか、日英翻訳という作業は英語に訳しているという感覚があまりありません。英語に訳すのではなく、英語を書いているという感覚です。英語ネイティブは日本語という言語をまったく無視して英語を話し、英語を書いているわけですから、日本語の語法や語感は極力排する必要があります。しかし、依頼者とやりとりができないので直訳調に訳せざるをえなくなります。しかし「原文に忠実に訳しているか」を基準に英文を書くとどうしても英文のクオリティが下がってしまいます。

こういう諸々の理由から、依頼者と細かいやりとりができない翻訳の仕事をするのは「私には」無理だという結論に達しました。そういう環境でも甘くできる人はいるのでしょうが、私にはそんな力量はないです(¯―¯٥)

ちなみに資格が取り消されているのに、いまだ英文レビューされていて昨日もメールが来ました。

あら、10点満点中7点以上が弊社が要求するレベルなんだから、ちゃんとその資格要件は満たしているじゃないか。でも資格取消されているためか、「フィードバックを確認する」をクリックしても「Unexpected error occurred」という表示が出てきて確認できませんでした。ちなみに最後に翻訳した案件では、依頼者からお気に入りトランスレーターに選ばれましたが、もう仕事は受けられないのでごめんなさいね(≧ω≦)/

10月 27, 2017 · Pukuro · No Comments
Posted in: 雑談

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