産後ケアリストってなんじゃらほい

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ネイリストを英語だと思っている人が多いようですが和製英語です。困ったことにWeblio辞書がnailistという訳語を載せています。「ネイリスト」は英語ではmanicuristと言います。「マニキュアを塗る人」という意味です。

この前、「産後ケアリスト」という言葉をたまたま見かけました。「ケアリスト」? 「ケアをする人」という意味? どうも一般社団法人・日本産後ケア協会の造語のようです。「心身ともに不安定になりやすい産後の女性に対して、こころと体、そして子育て環境を整える方法など、多方向から女性を支援する専門職のことです。専門的知識を持ってサポートし伴走者のように支える職業、それが産後ケアリストです」だそうです。この協会が開催する「産後ケアリスト認定講座」を受講し、認定試験に合格すると「産後ケアリスト」の資格をもらえます。

 

費用は2級が68,840円、1級が206,200円。年会費は10,800円だそうです。けっこう高いんですね。

しかし、「ケアリスト」とは不思議な言葉です。日本産後ケア協会はなぜ「産後ケアスペシャリスト」といったちゃんと英訳できる名前にせずに和製英語を使うのでしょうか。しかし「ケアリスト」は日本産後ケア協会の造語かと思いきや、どうやら以前から美容業界で使われていたようです。美容室でお客さん一人一人に髪にあったヘアケアをアドバイスするスタッフをケアリストというそうです。

いつから美容業界でケアリストという和製英語が使われるようになったか知りませんが、たぶんスタイリストを真似してできた言葉なのでしょう。ちなみにスタイリストは和製英語ではありません。stylistという単語は1795年頃に「名文家」(someone who has carefully developed a good style of writing)という意味で使われ始めますが、1930年代に美容業界でも使われるようになります。美容業界は客を集めてなんぼの商売ですから、かっこよく聞こえる単語を使いたくなるでしょうし、ケアリストという和製英語を使っても致し方ありませんが、非営利法人が変な和製英語を広めようとするのはあまり褒められたことではありません。というか、ケアリストは横文字ではどう表記されるのでしょうか。普通に考えればcariestでしょうが(でもそんな単語は英語にはありませんからね)、ネットで確認したらどうもcarelistと表記されているようです。

えっ、それだと「ケアのリスト」という意味にしかとられないじゃん。「日本ケアリスト協会」という団体の横文字はJapan Carelist Associationだそうですが、いいんか、それで?

 

なんでcaristではなくcarelistというアルファベット名にしたのかというと、たぶん「スタイリスト stylist」の真似をしたのだと思います。しかし、stylistはstyle+istだからstylistになるわけであって、「ネイリスト」もnail+istだからnailistという表記になってもおかしくないですが、care+istはcarelistになりようがありません。そもそも「careをする人」という意味の英語はすでにあります。carerです。横文字がそんなに好きなんだったら、「ケアラー」という言葉を使えばいいのに、だれが「ケアリスト」なんてわけのわからない言葉を使い始めたのでしょうか。「日本産後ケア協会」の誰が「産後ケアリスト」なんて変な言葉を使う決定をしたのでしょうか。「出産後ケア」は英語ではpostnatal careと言います。そのスペシャリストはpostnatal care specialistです。postnatal carerと言っても意味は通じます。しかし、postnatal carelistと言えば、それは「産後ケアで気をつけるべきリスト」という意味にしかとれません。いまや日本には230万人の外国人が住んでいるのだし、カタカナ名の新語を作るにしても、できるだけ誤解が生じないような言葉選びをしてほしいものです。「産後ケアリスト」じゃなくてせめて「産後ケアラー」でしょう。より良い名前は「産後ケアスペシャリスト」です。それで問題ないんじゃないんですか、日本産後ケア協会さん?

5月 4, 2018 · Pukuro · No Comments
Posted in: ■英単語豆知識

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