トクホを飲むとなぜ太るのか?

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トクホという言葉を聞いたことがない人はいないと思いますが、トクホが具体的にどのような食品なのかわかっている人は意外と少ないと思います。トクホは「保健機能食品」の一つです。人が口にするものは法律的には「医薬品」、「保健機能食品」、「食品」の3つに分類されています。「食品」に健康への効果と効能を表示することはできません。逆に「医薬品」は治療の効能と効果を明示する必要があります。「保健機能食品」はその中間に位置するもので、保健機能を表示することができます。

医薬品は医師の診察によって処方される薬品のことを指します。食品が何かについての説明も今さら必要ないでしょう。食品の中には「健康食品」と称されるものがありますが、健康食品は法的根拠がありません。販売主が健康のよい食品と宣伝しているものはすべて健康食品です。「サプリメント」、「栄養補助食品」、「栄養教科食品」、「健康食品」などの表示を目にしたことがあるでしょうが、国が健康に良いかどうか審査しているわけではないので、本当は健康にほとんど寄与しなくても健康食品と呼んでもかまわないわけです。

一番わかりにくいのが「保健機能食品」です。保健機能食品には「特定保健用食品(いわゆるトクホ)」、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」の3種類があります。最初に登場したのがトクホです。

 

「特定保健用食品(トクホ)」は1991年に生まれた制度です。それ以前は食品に健康への機能を表示することは薬事法で禁止されていましたが、1991年以降、国の定めた規格や基準を満たす食品において保健機能を表示することができるようになります。2001年にはビタミンやミネラルを基準値の範囲内で含む商品はその栄養成分の機能を表示してよいとされ「栄養機能食品」が生まれます。トクホよりも審査基準を軽くした「機能性表示食品」が登場したのは2015年です。

 

■トクホとは何か?

消費者庁によれば、トクホは「からだの生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、おなかの調子を整えたりするのに役立つ、などの特定の保健の用途に資する旨を表示するもの」を指します。この「保健機能成分を含む」成分を「関与成分」と言います。企業が臨床試験を行って有効性や安全性の科学的根拠を示して、国の審査に通れば特定保健用食品として認可され、特定の保健機能について表示することができます。日本健康・栄養食品協会の記事によれば、2018年3月末現在、特定保健用食品として表示許可・承認された食品は1082品目だそうです。

関与成分には、食物繊維、オリゴ糖、ペプチド、キトサン、ポリフェノール、カテキンなどがあります。保健効果の表示で許可されたものには、以下のようなものがあります。

●おなかの調子を整える

●コレステロールが高めの方に適する

●食後の血糖値の上昇を穏やかにする

●血圧が高めの方に適する

●丈夫な骨を作る

●貧血の改善

●歯を丈夫で健康にする

●血糖値が気になる方へ

とくに、トクホに使われているのが難消化性デキストリンです。トウモロコシから作られた消化が困難な食物繊維で、食後の血糖値の上昇を穏やかにする、おなかの調子を整える、糖の吸収を穏やかにするといった効果があるとされており、「キリンメッツコーラ」、「食事と一緒に十六茶W(ダブル)」、「からだすこやか茶W」などに入っています。

この難消化性デキストリンは兵庫県伊丹市の松谷化学工業が生産していますが、その効果については「ほとんどない」と考える専門家もおり、気休め程度と考える方がよいかもしれません。興味がある方は2007年に掲載された週刊新潮の「トクホの大嘘」という記事をお読みください。

 

 

■栄養機能食品と機能性表示食品

保健機能食品には特定保健用食品以外にも栄養機能食品と機能性表示食品がありますが、これらの違いがわからない人も多いかと思います。2001年に生まれた「栄養機能食品」は消費者庁によれば「栄養成分(ビタミン・ミネラル)の補給のために利用される食品」のことを指します。現在はビタミン13種類、ミネラル6種類、n-3系脂肪酸の計20種類の栄養成分が対象になっており、国が定めた1日当たりの摂取量の上限値・下限値の基準を満たしていれば、栄養機能食品であることを表示できます。国の許可申請は必要ありません。国の審査もありません。

安倍政権が規制緩和政策の一環として2015年4月にスタートしたのが機能表示食品です。トクホは科学的根拠を示すために莫大な費用と時間がかかりますが、機能表示食品は科学的根拠を示す論文などを消費者庁に届けるだけで製品に健康効果を表示できます。消費者が特定保健用食品の機能表示食品のちがいがわからなくて後者が前者程度の売り上げ増大を期待できるのではあれば、今後、食品会社は機能表示食品にばかり新製品を売り始めるかもしれません。

 

 

■トクホを飲むと太るわけ

トクホには利権が絡んでいると言われています。

トクホの利権が絡み合う実は危険な「人工甘味料」トクホ飲料

以下は内海聡医師の発言です。彼はガセ情報を流すこともあるのでこういう主張もあるくらいの感覚で読んでもらえればけっこうです。

「トクホを広める窓口となっている利害関係者組織に、700社以上の食品企業が加入する公益財団法人『日本健康・栄養食品協会』というのがある。トクホの申請には学術誌での発表が必須だが、この協会は『健康・栄養食品研究』という学術誌を発行して、それに申請認可したい食品企業の商品を投稿させている。つまり食品企業が加入する組織が自らこうした雑誌を出して、食品企業自身の利益誘導を行っている。さらにこの協会の常務理事は、厚生労働省からの天下り指定席になっている。たしか今の理事長も元厚生労働省の人、2009年にトクホの所管は消費者庁に移ったが、縄張りには影響なしのよう。このようにトクホを巡って見事なまでの産官学トライアングルができている。許可の要件はよく分からない抽象的な基準が羅列されているのみで、有効性や安全性についてきちんとした科学的なガイドラインは無いに等しい。…『日本健康・栄養食品協会』は、大企業の利益を拡大するための利権組織だ。トクホマークは毒ホマーク。つまりはただの嘘である。」 https://ja-jp.facebook.com/utsumi.jyuku/posts/1744182695848469:0

難消化性デキストリンなどの関与成分がどれだけ効果があるか疑問の声はずっとあがっています。食後の血糖値の上昇を抑えたいのであれば、トクホ飲料水を食事中に飲むより、野菜から食べる糖質制限ダイエットの方がはるかに効果的であろうし、食物繊維を取りたければトクホからではなく、身近な食事からとる方がはるかに安上がりだし、多くの量の食物繊維をとれます。逆にいつも決まったトクホを飲食するととりすぎになる危険性もあります。難消化デキストリンをとりすぎると下痢になるそうです。また高濃度カテキンをとりすぎると肝障害を起こす可能性があります。特に問題となったのが2009年にトクホ製品としての製造・販売を中止に追いやられた花王の「エコナクッキングオイル」です。

「他の食用油に比べて体脂肪がつきにくい」という触れ込みで、1999年に食用油として初めてトクホの表示許可を取得したのが花王の「健康エコナクッキングオイル」です。ところが、発がん性リスクの可能性のあるグリシドール脂肪酸がエコナに大量に含まれていることがわかったため、消費者パニックが起き、花王はエコナ関連商品の販売を中止します(注; 花王側は発がん性リスクはないと一貫して主張しています)。花王はグリシドール脂肪酸エステルだけを低減してエコナの販売再開をもくろみますが、日本での再販売に向けて、欧州食品安全機関(EFSA)にエコナの主成分であるジアシルグリセロールが体重減少に効果的であるという健康機能表示を申請したところ、その効果は認められないと却下されます。トクホで体脂肪がつきにくいというお墨付きをもらっていたのに、それをEFSAで否定され、今もって販売再開のめどはついていません。

エコナ以外のトクホがどれだけ体によいかも不明です。飲料水にはカラメル色素や合成甘味料が入っているので難消化性デキストリンをそんなにとりたければ、粉末でそれだけとればいいだけのことです(私はとりませんが)。アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKをなんで口に入れなあかんとですか。

 

またサントリーの黒烏龍茶やキリンメッツコーラは食前・食事中に飲まないとまったく効果がありません。最初にご飯から食べたら後からいくら野菜をとっても血糖値の急上昇は避けられないのと同じことです。しかし、トクホ飲料水の一般的なイメージは、「食べすぎた後にその埋め合わせにトクホを飲む」です。後からだと効果をまったく期待できませんが、消費者が後からでも効果があると間違って認識してくれていた方が売り上げアップを期待できるので、トクホ製造会社もこのあたりはあいまいにしておきます。下のCMを見てください。かつ丼を食べた後にトクホを飲んでいますよね。

下のCMでは矢吹丈が大食いをしています。トクホを飲まずに大食いしないように気をつけた方がいいんじゃないでしょうか。

ひろゆきが科学ジャーナリストの渡辺雄二と以下の会話をしています。

ひろゆき でも、吸収量が20パーセント減る。
渡辺 減る。でも、これ飲むからいいやと思って、3割とか4割普通より多く食べれば、かえって脂肪が増えてしまうということがありますから。そこら辺です。
ひろゆき じゃあ、ちゃんと意識して、食事と一緒に飲んで食事の量も変えないんだったら、これは結構意味がある。
渡辺 ただ、どうしてもそういうふうにこれに期待しちゃう部分があるでしょう、飲んでると。そうすると、やっぱり人間というのはいい加減なとこがあるから、自分でセーブできなくなって、果たして、それで本当に肥満を解消できるのかとかメタボを防げるのかというと、非常に疑問です。
https://logmi.jp/16790

トクホがあるからこそ暴飲暴食をして健康を害する可能性です。トクホが暴飲暴食をする免罪符になるのであれば、トクホこそが日本人の健康を害している食品と見なしてかまわないかと思います。それを実証する調査がPsychology Today(6/6/2018)に掲載されました。Death by Salad: Two Reasons ‘Healthy’ Food May Make You Fatという記事です。

著者のPeter A. Ubelによれば、食べている物が健康的と確信していると、不健康と考えている食品を食べている時よりも、満腹感を感じるペースが落ち、結果として大食いになるそうです。大学生の被験者を2つのグループに分け、同じクッキーをひとつ配って食べるよう言いますが、一方にはそのクッキーは「ヘルシーでタンパク質と食物繊維とビタミンがたくさん含まれて健康に良い」と説明し、もう一方のグループには「砂糖と脂肪と炭水化物が大量に含まれた不健康な」クッキーだと説明します。食後と食後45分後に今どれだけお腹が空いているか尋ねると、食べたクッキーが健康に良いと説明を受けたグループのメンバーの方がそうでない方のグループのメンバーよりも空腹感を感じているという結果が出ました。

 

別の研究では、被験者の学生を3つのグループによけ好きなだけポップコーンを食べてもよいと言いますが、そのポップコーンがグループAにはhealthy (健康に良い)、グループBにはnourishing (栄養価の高い)、グループCにはunhealth (健康に良くない)と説明します。最も消費量が多かったのがグループAで、グループCの2倍以上となりました。

 

この2つの調査の示すところは、トクホを飲むことで健康に良くない食事の摂取量が増えるリスクが非常に高いということです。トクホにどれだけ効果があるかはわかりませんが、少なくともトクホを飲む人はトクホは体によいと信じています。脂肪分やカロリーの高い不健康な食事は本来であれば健康的な食事をとるときよりも早く満腹感が起きますが、トクホを飲むことでその不健康さが中和されると思い込むと、食事量が増え、結果としてトクホを飲まない時よりも体によくない食事をとることになります。健康になりたければトクホなんてものに頼らず、不健康な食事をとらないのが一番よいということです。皆さんも炭水化物の取り過ぎには気をつけましょう。

 

6月 17, 2018 · Pukuro · No Comments
Posted in: 雑談

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