風の谷のナウシカの英語

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『風の谷のナウシカ』の英語版はNausicaä of the Valley of the Windと言います。なぜNausicaではなくNausicaäなのかはよくわかりませんが、もしかしたらホメーロスの『オデュッセイア』に登場するナウシカアーがそう表記するからなのかもしれません。

ナウシカはナウシカ独自の特殊な用語が多数あるので英語版でその英語訳を確認するのは楽しくもあるし、また面倒でもあります(何が煩わしいかと言うと、せっかく時間をかけてナウシカ専門用語を覚えても実際の日常会話では役に立たないことです)。「巨神兵」はgiant warrior, 「腐海」はtoxic jungleと訳されています。「王蟲」はそのままOhmuです。

ボキャブラリー力向上のためのアニメとしては、ナウシカはジブリの中ではいまいちかもしれません。ナウシカよりもよくありがちな日常生活が舞台となっている『耳をすませば』や『魔女の宅急便』の方が役に立つセリフ満載です。

しかし、それが逆に他のジブリアニメよりも口語調でなくなり、その分、英文法の見本例文についしたくなるセリフが数多く出てきます。ここではそのいくつかを見ましょう。

 

■現在完了─継続

『風の谷のナウシカ』では、ユバ様の登場後、以下のナレーションが始まります。

巨大産業文明が崩壊してから千年
錆とセラミック片におおわれた荒れた
大地に くさった海…腐海(ふかい)と
呼ばれる有毒の瘴気を発する菌類の
森がひろがり 衰退した人間の生存を
おびやかしていた

英語版では以下のように訳されています。

A thousand years have passed since the collapse of industrialized civilization. A toxic jungle now spreads, threatening the survival of the last of the human race.

かなり短くなっています。最初の英文は「巨大産業文明が崩壊してから千年」、2つ目の英文は「腐海(ふかい)がひろがり 衰退した人間の生存をおびやかしていた」の部分です。「腐海」は「有毒のジャングル toxic jungle」と訳されています。

a thousand years = 1,000年
pass = (時が)過ぎ去る、たつ
collapse = 崩壊 a sudden failure in the way something works, so that it cannot continue
industrialized = 工業化した、産業化した
civilization = 文明 human society with its highly developed social organizations
the last of… = 最後の人[物、事]
the human race = 人類 all people, considered as a species

最初の文で現在完了が使われています。現在完了は、「have [has] + 過去分詞」の形をとります。「since A (~以来) 」が続く現在完了は、since Aの時期から現在までのある状態の「継続」を表します。ここでは、1,000年前に産業文明が崩壊し、その崩壊状態が今も続いているというわけですね。

threatening以下は分詞構文です。ここでの分詞構文の意味は付帯状況と考えるのがよいでしょう。A toxic jungle now spreads and threatens the survival of the last of the human race.という意味に捉えてよいということです。ただし「原因・理由」を表すと考えることも可能だと思います。

 

■現在完了─経験

ナウシカ 「王蟲の抜け殻。すごい。完全な抜け殻なんて初めて。」

A perfect ohmu shell. Amazing. I’ve never seen a whole shell before.

現在完了は「完了・結果」、「経験」、「継続」などの意味がありますが、ここではneverを伴い「現在までの経験」の否定を表わしています。「~したことがある」もしくは「~したことがない」という経験を表わす時に現在完了を使います。ここでナウシカは、「以前に」(before)「1度も」完全な抜け殻を見たことが「ない」(never)と主張しています。現在完了だけで「現在までの経験」を示せるので、beforeをつけ加えなくても文章の意味はほとんど変わりません。

 

■過去完了

ナウシカ「まああ、キツネリス。私初めて。」

Wow, is that a fox-squirrel? I’ve never seen one.

ここでの現在完了は「経験」を表しています。キツネリスを見た経験がないと言っているわけです。

そして、ユパ様はこう返答します。

I hadn’t, either.

I hadn’t seen a fox-squirrel, either.と言っているわけですが、ここで過去完了<had+過去分詞>が使われていることに注目してください。ナウシカはユパ様のポーチの中にいるキツネリスを「今」初めて見たから、現在完了が使われてます。現在というこの一点においては見ているけど、それ以前はまったく見たことがなかったから現在完了です。でもユパ様が初めてキツネリスを見たのはナウシカがキツネリスを初めて見たときよりも以前のことです。は「その前」にキツネリスを初めて見ています。だからユパ様にとってはキツネリスを見るという行為は過去形であり、その過去の一点を基準にして、それ以前は見たことがなかったから過去完了が使われています。

<生まれてから(past1)→30分前(past 2)→今(present)>

ナウシカは<past 1─present>の間、キツネリスを見たことがなかったから「現在完了」、ユパ様は<past 1─past 2>までキツネリスを見たことがなかったから「過去完了」というわけです。

わかりました?

ところで、eitherは否定文の後に続いて、「~もまたない」という意味になります。ここでは、ナウシカと同じく私もキツネリスを見たことがないといっているわけです。肯定して「~もそうです」というときは、tooを使います。
例文: “He can’t speak English fluently.” “No, you can’t do that, either.”

 

■間接疑問のI wonder…

ナウシカは「オウムの抜け殻(Ohmu shell)」についていた目を殻から外して持って帰ろうとします。

ナウシカ「すごい目。これひとつなら持って飛べるかな?」

What an amazing eye. I wonder if I could fly back home with this.

amazingはweblioには「驚くべき、びっくりするような、すばらしい」という訳が載っていますが、これだとsurprisingとの違いがわかりません。amazingはsurprisingの強意形です。つまりextremely surprisingがamazingです。fly back homeは「飛ぶ」「戻る」「家に」のセットということで「飛んで家に戻る」という意味になります。withは「~を持って」という意味の前置詞です。

wonderは要するに自問自答するということです。「あれって何々かしら」って頭に浮かんだら、ネイティブには自然とI wonder…という文句が浮かんできます。次のif節(~かどうか)で具体的に、何について疑問に思っているかが規定されます。この言い回しを自然と出せる日本人は意外と少ないようです。I wonder if…で覚えるよりも、なにか疑問が起きたら、I wonderとつい口に出すクセをつけると良いです。wonderの後は常にifとは限りません。I wonder which of these is your favorite book. (どちらの本があなたのお気に入りかしら)、I wonder where he went away. (彼はどこに行ったのだろう)など様々な疑問詞をつけることができます。

 

■onlyという意味のnothing but

ユパ 「おお。オウムが森へ帰っていく。光弾と虫笛だけでオウムを静めてしまうとは。」

Unbelievable. It’s going back to the jungle. She turned it back with nothing but an insect charm and flash grenades.

unbelievableは「信じがたい」という意味で覚えている人が多いでしょうが、amazingと同義語です。つまりunbelievableもamazingもextremely surprisingという意味です。go back toは「~に戻る」、turn A backは「Aを引き返させる(make A return in the direction A has come from)」、insectは「昆虫」、charmは「(腕輪などにつける)飾り、お守り」、flashは「閃光(a sudden bright light that quickly disappear)」、grenadeは「手榴弾、薬品入り球弾」を意味します。「光弾」はflash grenade、「虫笛」はinsect charmと意訳されています。

nothing butは「ただ~だけ」、「~のほかは何もない」という意味ですが、同意語はonlyです。「nothing but=only」をしっかり覚えておきましょう。

 

■have no choice but to 「~せざるを得ない」

キツネリスをナウシカに見せるユパ様。

「こいつが羽虫にさらわれたのを人の子と間違えてな。つい銃を使ってしまったのだ。」

I saw an insect carrying him off, and I mistook him for a human baby. I had no choice but to use my gun.

insectは「昆虫(bug)」、carry A offは「Aを持ち去る、運び去る」、mistookはmistakeの過去形でmistake A for Bは「AをBと間違う」。seeの過去形のsawは知覚動詞です。seeやhearなどの知覚動詞は「動詞+目的語(O)+…ing」の形で「Oが~しているところを見る[聞く]」という意味になります。

have no choice but toは「~する以外の選択肢はない、~せざるを得ない」という意味のイディオムです。have toとほぼ同義ですが、不可避性をやや強めた表現です。

■動物を飼うはkeep or have?

ナウシカがキツネリスのテトに声をかけます。

There’s nothing to fear. Nothing to fear. Hmm. See? Nothing to fear. Right? You were just a little scared, weren’t you? He’s perfect. Will you let me keep him, Lord Yupa?

「ほら、こわくない。こわくない。うっ。ほらね、こわくない。ねえ。おびえていただけなんだよね。うふ。うふふふ。ユパ様、この子わたしにくださいな。」

ユパ様はOf course. Certainly. (「おお、かまわんが。」)と返答します。be scaredは「怖がる(be frightened)」という意味です。中高校の英語の授業では「(動物)を飼う」はkeepと習っている人が多いと思いますが、「ペットを家で飼う」という場合はふつうhaveを用います。keepは冷めたニュアンスがあるためです。だから利用価値があるから飼うという場合はkeepになります。
I keep chickens in my garden.

家でわんこを飼う場合は
I have a dog as a pet.

ナウシカはkeepを使っていますが、Will you let me have him?でもかまわないと思います。キツネリスは野生動物だから、愛玩的な対象と見ずにkeepと言ったのでしょう。

■「過去の行為に対する非難や後悔」を表わすshould have + 過去分詞
ナウシカとユパ様の会話です。

ナウシカ 「父はもう飛べません。」
ユパ 「ジルが? 森の毒がもうそんなに。」
ナウシカ 「はい。腐海のほとりに生きるものの定めとか。」
ユパ 「もっと早くに訪れるべきであった。」

英語ではこうなっています。

“Father can’t fly anymore.” “King Jihl? So the jungle’s poisons are taking their toll.” “Yes. Father says it’s the fate of all of us who live near the jungle.”
“I’m sorry. I should have come sooner.”

not anymoreは「もう~でない (not any longer)」、take its/their tollは「大きな損失をもたらす (cause suffering, deaths or damage)」、fateは「運命、宿命 (the things that happen to someone, especially negative things)」

今日の重要構文は<should have + 過去分詞> です。「~すべきであった」〔実際にしなかったことを含意。過去の行為に対する非難・後悔を表す〕という意味になります。

 

■be looking forward to …ing 「~するのを楽しみにしている」

ミトがユパ様に言った「今宵はまた、異国の話を聞かせて下さい。」は英語版ではこう訳されています。

Thank you, sir. I’m looking forward to hearing all the news from the other kingdoms tonight.

「~するのを楽しみにしている」という意味のlook forward to …ingは進行形で使われることが多いです。toの後は動名詞でも名詞でもかまいません(e.g., I’m really looking forward to my holiday)。

 

■remind A of B 「AにBを思い出させる」

ユパ様が生まれたばかりの赤ちゃんを抱き上げてこう言います。「おおっ、よい子だ。幼い頃のナウシカを思い出す。」

Oh, she’s a fine baby. Strong and healthy. She reminds me of Nausicaa as a child.

remind A of Bは「AにBを思い出させる」という意味です。Bを思い出させるきっかけになったものは「主語」で登場します。ここではその赤ちゃんがナウシカを思い出される、つまり赤ちゃんを見てナウシカを思い浮かんだというわけです。では、なぜその赤ちゃんはナウシカを思い浮かばせたのでしょうか。答えは1つ。似ていたからです。英和辞典ではそのあたりの説明に欠けています。某英英辞典ではremindは以下のように説明されています。

be similar to, and make you think of someone that you know or something that happened in the past

要するに、あるもの/ひとが既知のものと似ていたから、既知のもの/ひとを思い浮かべるわけです。

 

■「名づける」はnameそれともchoose?

赤ちゃんを産んだばかりのママさんがユパ様に名付け親になってくれるようお願いします。「どうか、この子の名付け親になってくださいませ。」

We would be very honored if you would choose a name for her.

ユパ様は即答します。「引き受けよう。良い名を送らせてもらうよ。」

Very well. I’ll see that she’s given a good name.

be honoredは「光栄に思う」、I’ll see that…は「~するように気をつける」という意味です。she’s givenのshe’sはshe hasではなく、she isの略です。つまり、現在完了ではなく、受動態というわけです。

今回注目したいのは「choose a name for A」という熟語です。「Aに名前をつける」という意味ですが、「名づける」に相当する英単語はnameです。
I named my cat ‘Sora.’
Seiko Matsuda named her baby ‘Sayaka.’

chooseは”decide what you want from a range of things or possibilities”、つまりすでにあるものの中から気に入ったものを決めることです。だからこのママさんも普通にお願いするのであれば、

We would be honored if you name her.
と言うべきだったでしょう。

そこをあえてchooseという動詞を使っていますので、ニュアンス的には、風の谷には誰もが納得できる「いい名前」というのがあって、ユパ様はその中からひとつお選びになる、という感じになります。

■ It is ~that…の強調構文

ナウシカが大ババ様に尋ねます。「大ババ様。探すってなあに?」

Obaba, what is it that Lord Yupa searches for?

この文はIt is… thatの強調構文です。

Lord Yupa searches for something. ユパ様は何かを探している。
に「It is~ that…」の強調構文に変えると、~の部分に、somethingを強調すると

It is something that Lord Yupa searches for.

となりますが、このsomethingを尋ねる疑問文にすると、

What is it that Lord Yupa searches for?

になります。What does Lord Yupa search for?という疑問文の強調構文と言ってもかまいません。

 

■感嘆文のwhat

ミトのセリフです。「まったく厄介なものを持ち込みよって」

What a mess those Tolmekians dumped on us.

messは「混乱 a situation that is full of problems」、dumpは「適当に捨てる」という意味です。

感嘆文のwhat構文は以下の形をとると習ったはずです。
<What (a [an]) + 形容詞 + 名詞 + S + V …!>

e.g., What a nice house you are living in!

名詞の後の<S + V ..>の部分はよく省略されます。
What a nice house!

ミトのセリフだと
What a mess!
といってもかまいます。

すでにお気づきでしょうが、ミトのセリフは感嘆文にもかかわらず「形容詞」の部分が抜けています。でも間違いではありません。「名詞」が感嘆する方向性を示すものであれば、「形容詞」を省略できます。

What a house it is!
これはダメな英文です。これだけではこの家をポジティブに見ているのか、ネガティブに見ているのかわからないからです。それに対して

What an accident it was!
はオーケーです。badやterribleといった形容詞を挿入しなくても、事故に対してびっくりしているのであれば、良くないことについて感嘆していることが容易に予測できるからです(むろん、例外もあります。What a happy accident it it! 「なんて思わぬ幸運をもたらすアクシデントなの!」)。

ミトはmessと言っているわけですが、この単語はネガティブな意味でしか使われません。だから「形容詞」の部分を省略できます。

■It is said that…

ユパ様が渋い声で「旅の途中で不吉なうわさを聞いた。ペジテ市の地下に眠っていた旧世界の怪物が掘り出されたというのだ。」と述べます。

While I was traveling, I heard a frightening rumor. It was said that a monster from the old world was unearthed from deep beneath the city of Pejite.

frighteningは「恐ろしい making you feel fear」、rumorは「うわさ」、unearthは「~を掘り出す、発掘する discover something in the ground」、beneathはunderという意味です。

It is said that S + V…はS is said to V…に書き換えることができます。It was said that a monster…は

A monster from the old world was said to be unearthed from deep beneath the city of Pejite.

と書き換えることができます。

 

■同格名詞の冠詞省略

「聞け!トルメキア帝国辺境派遣軍司令官クシャナ殿下のお言葉だ。」

Listen now! You will be addressed by Her Highness Kushana, commander of the Tolmekian army.

クシャナの部下クロトワのセリフです。addressは「~に話しかける、演説する」、Her/His/Your Highnessは自分より位の高い人を呼ぶときに使う表現、commanderは「指揮官、司令官 an officer who is in charge of a military operation」という意味です。

同格名詞での冠詞の省略に注目してください。人名の後に同格名詞として官職・身分などを表す場合、単数形の可算名詞でも、冠詞がよく省略されます(とくに、それが任意の範囲において1人しかいない身分や官職を表す場合)。上の文では、Kushanaはthe (or a) commander of the Tolmekian armyのはずなのに、theが省略されています。

 

■not… ever again 「もう2度と~ない」

クシャナのセリフです。
「私に従う者には、もはや森の毒や虫どもにおびえぬ暮らしを約束しよう。」

I guarantee that those who join me will live without fear of the insects or the jungle’s poisons ever again.

guaranteeは「~を保証する promise that something will happen or exist」、without fear ofは「~の心配なしに、~の恐れなく」。
without fear of = ~の心配なしに、~の恐れなく

「not… ever again」は「 もう2度と~ない」。You will not have to fear the rule of communism ever again. だと「皆さんはもう2度と、共産主義の支配を恐れる必要はありません。」という意味になります。クシャナのセリフではnotの代わりにwithoutが否定の意味で使われています。

7月 16, 2018 · Pukuro · No Comments
Posted in: ・アニメ英語

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