伊藤和夫「基本英文700選」をググる: 第1回

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鈴木長十・伊藤和夫の『新・基本英文700選』に出てくる英文をググってみました。そしてわかったこと。

この本に掲載されている英文は悪文だらけです。Google in Englishで700選に掲載されている英文がネイティブの間でどれだけ頻繁に使われているかチェックしたところ、検索に引っかからない英語表現が多数出てきました。検索に引っかからないとは要するに、英米人がまったく使わない表現ということです。必死で700選に出てくる英文を丸暗記するのは、無駄骨にすぎないわけです。だってアメリカやイギリスでは誰もそんな英語表現をしないのですから。

『基本英文700選』は発売当初から、使いづらい参考書として知られていましたが、それでも名文だらけの例文集、英語の達人を目指すならば必ずクリアしなければならない参考書として、受験生の間では畏敬の目で見られてきました。でも名文ではなく迷文・謎文だったわけです。受験生の方へ: 本棚にこの本があったらすぐさま捨ててください。駿台の英語担当の先生方へ: 早く『700選』を絶版にしてください。

では、『700選』に出てくる英文を検討します。英語は数学とは異なり、これは正しい、これは間違いだと簡単には断言できません。変な表現でも多くの人が使えば正しい表現になるし、不自然な表現でも文法的に間違いがなければ使うなとまでは言えません。以下、疑問を感じた英文を羅列しますが、それらの文章を受け入れるかどうかの最終的な判断はご自身でおこなってください。今回は『英語の基本文型 1.主語+動詞+名詞(形容詞)』(pp. 6-9)を検討します。

3. She kept walking about the room. 彼女は部屋の中を歩きまわっていた。

「部屋の中」はなぜin the roomではなくて、about the roomなのか。around the roomでもかまわないか。

4. It is a pity that a man of your ability should remain unknown to the world.
あなたほどの才能の持ち主が世間に知られずにいるのは惜しいことです。

伊藤和夫氏の説明: 「意向、命令、要求、決定」の内容を示す名詞節にはshould(あるいは仮定法現在)を用いる。例: His father decided that he should be a doctor. (彼の父は彼を医者にすることに決めた)。

pity (a feeling of sympathy and undersanding for someone else’s unhappiness or difficult situaiton 他の人の不幸や困難な状況に対して同情したり理解を示す気持ち)は、命令、要求、決定ではないから、「意向」というわけでしょうか。「意向」とは心の向かうところ。どうするかについての意志、判断のことを指します。「意向」に相当する形容詞はほかに何があるのでしょうか。

伊藤和夫氏は、shouldもしくは仮定法現在を用いると述べています。仮定法現在では「動詞の原形」が使われます。だからここでは<It is a pity that a man of your ability remain unknown to the world.>になるかもしれないと言っているわけです。では本当に<It is a pity that…>の構文ではshouldもしくは仮定法現在が用いられるのでしょうか。ググってみましょう。“It is a pity that a man of your ability”で検索すると、出てくるのは日本もしくは中国(もしくは台湾)で書かれたものばかりです。なぜ中国のサイトに引っかかるかというと、どうも『基本英文700選』は中国で翻訳されて英語テキストとして使われているからのようです。

閑話休題。a man of your abilityという表現がポピュラーでないため、検索に引っかからなかったのかもしれません。ここで英語ググりのコツがいります。<It is a pity that>という構文を使った表現を思いつかないといけません。<It is a pity that the world…>(世界が…なのは残念だ)という表現がありそうなので、この表現でググってみます。すると260万件出てきました。英文を上からチェックすると、

It is a pity that the world has lost all sense of God.
it is a pity that the world has taken a rather unbalanced view of the three challenges
It is a pity that the world is increasingly lacking in security and peace.
It is a pity that the world is weird and no one believes in magic.
it is a pity that the world is so quick to criticise

shouldも仮定法現在も使われていませんね。どうも4は危険例文のようです。よい子の皆さんはこの例文を覚えないようにしましょう。ちなみに「実践ロイヤル英文法」には

(It is a) Pity that his sister is missing.

という例文が出ていました(p.380)。pityという名詞を使うときに、わざわざ仮定法が云々といった難しいことを考える必要はとくにないようです。

7. One night he came home very tired and sad. ある晩彼は、すっかり疲れ憂うつになって帰ってきた。

伊藤和夫氏の解説: He came home + He was very tired and sad.と考える。

“he came home very tired”でググると、出てきたのは35件のみ(その多数は日本語サイトから)。これも迷文の可能性高し。

9. You should see a dentist at once. すぐ歯医者にみてもらいなさい。

「すぐ歯医者にみてもらいなさい」というごくありふれたフレーズも “you should see a dentist at once”をググると、なぜか検索数がたったの27件(そのほとんどが日本と中国のサイト)。会話文に文語的なat onceを使うのがおかしいのでしょうか。“you should see a dentist immediately.”だとググりオーケーです。

12. He behaved himself so as not to give offence to others.

伊藤和夫氏はブリティッシュ英語が好きだったようですが、国際語としての地位を勝ち取ったのはアメリカ英語です。双方がごちゃまぜになると変な英語になるので、イギリスに留学しないかぎりアメリカ英語を学んだ方がよいと思います。ここでoffenceは米語ではoffenseになります。

5月 12, 2011 · Pukuro · No Comments
Posted in: ×基本英文700選

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