E-journal GEO最新号: 地理教育特集号

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J-STAGE(http://www.sanctio.jp/archives/4871参照)で見ることのできる学術誌のひとつにE-journal GEOがあります。日本地理学会が年に2回発行していますが、読者対象がわりと一般向けなので地理学の素人でも興味深く読める論文をインターネットを通じて無料で読むことができます。とくに最新号は日本の小中高校の地理教育の問題と課題をテーマにしており、面白い論文が数多く掲載されています。興味のある方はhttps://www.jstage.jst.go.jp/browse/ejgeo/7/1/_contents/-char/ja/で論文をダウンロードして読んでみてください。

 

井田仁康(筑波大学)・吉田和義・平澤香・浅川俊夫 「日本の学校地理教育における現状と課題」(pp. 3-10)
小学・中学・高校における地理教育の現状を概観し、問題点を探った論文。

日本の地理教育の特色: ①学習対象の空間的範囲が同心円的拡大になっている。小学校では学校の周囲から都道府県、中学では日本、高校では世界; ②地理的事象の「理解」が重視され、その「価値判断」は求められない; ③地理教育を専門とする社会科教員が足りない。

小学校地理教育: 世界の諸地域について具体的に学習する機会がない。第6学年で「3世界の中の日本」の単元で、米国・中国・韓国のいずれかの国を選択して学習するのみ。

中学校地理教育: 2008年度版学習指導要領の実施により、日本国土だけでなく世界に関する地理的認識の育成も重視されるようになる。これは高校で地理履修者が少ないことを鑑みた方針変更である。

高校地理教育: 2013年から実施予定の新教育課程によれば、地歴科では世界史系科目のみが必履修、地理系科目は日本史系科目との選択履修。地理教員の減少と各自治体が日本史系科目の必修化を打ち出しているため、地理系科目の履修者が減少する見込み。

 

村山朝子(茨城大学) 「社会科教育における地理の役割」(pp. 11-18)
日本の小中高の地理教育に強い危機感をもった論文。高校の世界史必修に強く反対。

「教科としての社会科の構造は、1989年学習指導要領改訂で大きく変わり、社会科は小学校3年から6年までの4年間と中学校3年間の計7年間に限られた。高等学校の社会科は解体され、地理歴史科と公民科がおかれた。地理教育は、中学校までは社会科という教科のもとで、高等学校では地理歴史科の科目地理として行われている。」(p.11)

小・中学校社会科: 小学校女性教員は社会科が苦手。社会が「得意」とする教員は男性62.2%、女性36.4%。公立中学校社会科教員は地理が苦手。得意な分野は歴史的分野43.2%、公民的分野29.3%、地理的分野14.9%。ただし、中学校新入生の8割以上が地理に関心をもっている。

「公民は、現在の事象を事例として扱いながらも、知識の面での基礎・基本が比較的明確である。それに対して、地理は知識として何をどこまで教えればよいのか、身につけさせればよいのかが明確ではない。」(p. 12) ← ホント?

高等学校地理歴史科: 「生徒は、歴史の勉強は「普段の生活や社会生活」にはそれほど役に立たないけれど、「よりよい社会を考える」ためには大切である、と感じている。それに対して、地理は「社会の一員」として「よりよい社会を考える」というよりも、「私」個人としての「普段の生活や社会生活」に「役立つ」勉強という認識が高い。日常生活に役立つ知識や技能という地理の実用性は認識されているものの、地理の学習と“市民性を育成する”という社会科教育の目的とが、生徒には結びつきにくいことを示しているといえる。」(p. 13)

地理と歴史の関係: 1947年に社会科が誕生して戦後の長い期間、多くの高校生が地理を履修していたが、1978年学習指導要領で現代社会が必修科目になると地理と倫理の履修者が激減、さらに1978年改訂で社会科が公民科と地理歴史科に分離し、世界史が必修になるとさらに地理を学ぶ高校生が減った。

「国際化の急速な進展への対応として、国際的資質の育成を掲げて世界史は必修になったけれども、世界地理が中心である地理は必修にはならなかった。高等学校世界史必修を受けて、中学校社会科の歴史的分野は実質的に日本史学習となった。地理的分野も国土認識に重点が移ったうえ、方法知重視となり、世界認識は高等学校に移った。こうして中学校までの学習で世界史を学ばず、また地理的世界像を描けないまま、生徒は高等学校で初めて世界史に出会うことになったのである。」(p. 13)

「高等学校社会科解体ならびに世界史必修以降の中等教育における社会科教育のカリキュラムの変化が、国際的資質の育成にむしろマイナスに働いた、と解釈するのは考えすぎか。」(pp. 13-14)

著者は高校で世界史だけが必修であることに強い憤りを感じている(p. 14参照)。

地理の役割: スウェーデンの地理読本である『ニルスのふしぎな旅』を高く評価(<-村山氏は『「ニルス」に学ぶ地理教育・環境社会スウェーデンの原点』の著者)。

「地理は地域に生起する事象を地理の見方・考え方で捉えることによって、「よりよい社会を考える」ための価値判断・意思決定の前提となる科学的社会認識において重要な役割を果たすのである。」(p. 16)

 

戸井田克己(近畿大学) 「高校地理カリキュラムの方向性を考える」(pp. 19-26)

2009年3月に高等学校における新学習指導要領が公示され、2013年4月から実施される予定。戸井田氏はこの改訂を「一言でいえば、従来の「方法知」を重視する立場から、「内容知」重視の方向へと大きく舵をきった」と判断。

高校カリキュラムをめぐる状況: ①1989年に地理・日本史・世界史を含む地理歴史科が新設され、世界史だけが必修になったことが地理履修者の減少を招いたと強く批判(p. 20)。②中学校で地理が専門の教員の不足。③大学入試、とくに私大で地理受験ができないことに憤りが感じている様子。私大入試で「地理歴史」で受験可能な860学部のうち、選択が可能なのは世界史で848(98.6%)、日本史で810(94.2%)なのに対し、地理選択が可能な学部は380(44.2%)にすぎない。とくに偏差値の高い大学で地理受験ができないことが多い。「しかし、私大といえども私学助成金を交付される公的教育機関であるから、学校教育法施行規則が規定するところの、学習指導要領の科目編成に準拠した入試体制を組む社会的な責任があるのではないか。「地理歴史」は世界史・日本史・地理の3分野からなる教科であるから、このうちの1分野だけを不当に軽く扱うような入試体制のあり方は、大局的な見地からいえば、国の教育方針に反しているといえなくもない。」(p. 20)。

新地理カリキュラムの骨子: pp. 21-22。

高校地理は本当に不要か: 「一国として、地理がこれほどまでに軽視されることは、近代日本の地理教育史を通じても、また、近年の主要外国(ヨーロッパ各国、韓国、中国など)の状況を眺めても、いまだかつてなかった。」(p. 22)。戸井田氏は地理必要論を力説。

再生に向けたカリキュラム戦略: 地理と歴史を融合した総合的な社会科科目を新設する動きに反対。地理が専門の社会科教師は少ないため、総合的科目は実質的に歴史専門の教師によってコントロールされるため。「地理歴史」が「世界史」、「日本史」、「地理」の3分野から成り立っていること自体に疑問を呈している。なぜ歴史は2つに分かれているのか―「このように、「自国史」に対して「世界史」が独立して存在するという枠組みがそもそも絶対的なものとはいえず、それは諸外国のカリキュラムを見てもわかることである」(p. 25)。「私見を示せば、原稿の「世界史」と「日本史」の内容を一度解体して、新たに「人類史」(4単位選択)と「近現代史」(2単位必修)に再編成してはどうだろうか」(p. 25)。

「「近現代史」(仮称、2単位必修)、「人類史」(仮称、4単位選択)、「地理A」(仮称、2単位必修)、「地理B」(仮称、4単位選択)の4科目構成とし、すべての高校生に最低限、「近現代史」と「地理A」だけでも履修を保証するようなカリキュラムは組めないものだろうか。」(p. 25)

◆今回の特集号でもっとも挑発的な議論を提出した論文。

 

秋本弘章(獨協大学) 「地誌学習再考」(pp. 27-34)

「地誌」「地誌学」と「地誌学習」: 「「地誌」は地域の実態を情報として伝達することを目的に記載されたもの」(p. 28)。「「地誌学」は、特定の地域における地域的特徴を総合的に究明することを目指す地理学の一分野」(p. 28)。「「地誌学習」は「地誌」と「地誌学」の双方を基盤とした学習である。」(p. 28)

情報伝達や内容理解に学習の重点を置く「地誌」を基盤とした学習を「知識重視の地誌学習」、視点や調査・分析といったプロセスに学習の重点を置く「地誌学」を基盤とした学習を「方法重視の地誌学習」とする。=>英語ではA, B, and Cと書くけど日本語の文章で<「地誌」「地誌学」と「地誌学習」>と書くのはちょっと不自然かも。

地誌学習の役割: 民主主義教育の一環として地理的知識を身につけさせることの大切さを力説。

学習指導要領からみた地誌学習の変遷: 「知識重視の地理学習の問題点」―多くの地域を扱おうとすると、表面的な学習に止まり、「羅列・網羅的で暗記重視の学習」を助長する。

「しかも・羅列・網羅的で暗記を重視する学習では、児童・生徒に世界認識を形成されることが難しい。なぜなら、世界認識とは、個別の地理的知識ではなく、相互に結びついて、体系化された知識だからである。認知科学でいえば、長期記憶に属するものである(小林 1996。」(p. 29)=>突然、認知科学云々の話が出て唐突な感は否めない。

「方法重視の地誌学習」では「一般的共通性」と「地方的特殊性」の概念が重視される。この2つの概念把握の方法として「静態地誌」、「地域抽出法」、「動態地誌」という方法が地誌学習で採用される。

「方法重視の地誌学習」の意義と課題:

「児童・生徒の興味・関心を出発点とし、調査・研究という体験を通じて自らの世界認識を形成していくという方法は構成主義の考え方にも通じている。」(p. 31) =>突然、構成主義について語る理由がよくわからない。

地誌学習のこれから―欧米の地誌(地理)学習の動向を踏まえて―: 欧米の地理教育では空間的思考という概念が重視されている。これには日常生活空間レベル・現実空間レベル・知的空間レベルの3つがある。

著者は小学校の地理クラスで世界の学習がほとんどないことを危惧。政治的中立性を重視するあまり、地理授業が一般的な概念の学習のみで、「これからの社会をどのように構築していくか」という理念と政治的判断を伴って地理を学ぶ姿勢の必要性を説いている。

 

池俊介(早稲田大学) 「地理教育における地域調査の現状と課題」(pp. 35-42)

はじめに: 「本校では、小・中・高校における地域調査の実態を整理するとともに、野外での地域調査の地理教育論的な意義を明らかにし、地域調査の今後の課題と活性化のための方策を検討することを目的とする。」(p. 36)。とくに野外調査に焦点を当てる。

小・中・高校における地域調査の実態: 小学校の社会科学習で最も地域調査が重視されるのは3・4学年の地域学習であり、ほとんどの学校で行われている。中学の「身近な地域の調査」では実際には野外での地域調査を行わないことが多い。高校での地域調査の実施率も低い。

「地域調査が行われない根本的な要因は、地域調査の実施に対する教員のモチベーションの低さにある。したがって、地域調査の実施率を向上させるためには、まず教員に地域調査の意義を十分に理解してもらうことから始める必要がある。」(p. 37)

地域調査の意義: ①子どもの学習意欲を高め、学習課題をもたせやすい、②地域的特色をつかむ方法を習得しやすい、③地域を比較するための「ものさし」を形成できる、④地理的スキルを習得しやすい、⑤子どもの貧弱した原体験を補完しうる。

地域調査の今後の課題: 内容面での課題―①子どもの発達段階に応じた地域調査のあり方の検討、②地理的事象をとらえる見方を育てる方法の検討、③地域調査と他の学習内容との関連性についての検討。制度面での課題―教員養成大学で地理学専攻以外の学生に対して地域調査の授業が用意されていない。各小学校で地域調査に必要な資料や情報が教師間で共有されていない。

 

寺元潔(玉川大学) 「地図・地球儀・空間認知と地理教育」(pp. 43-48)

マップ&グローブスキル: 「地理と地球儀に関する技能」を米国ではmap and globe skillsと呼ぶ。「マップ&グローブスキルは、言い換えれば現代社会を生き抜くツールであり、同時に核となる知識(ナレッジ)なのである。」。「地図はその中で地図言語と呼ばれる一定のルールに従って描かれた空間表現であり、人間の空間認知とはいささか異なる。」。「一方、人間の空間認知に至ってはかなり誇張やゆがみが予想される。…空間認知はあいまいで自己のもつ知識量や関心の差が顕著に表れる心理なのである。地図や地球儀は我々の空間認知の状態をより是正し、リアリティをもたらしてくれる役割を担っている。」(p.44)

子どもの空間認知形成と地図: アンカーポイント理論について。地図の点記号、線記号、面記号を多角的に捉える必要性。

地理教育の名脇役としての地図: アメリカの多様な地図認識について。

地理学の社会的有用性を高めるために: 「地理教育は、地図の社会的有用性を最も高める場であり、今日、地理学が一定の認知をされている後ろ盾でもある。」(p. 47)。

 

伊藤智章(静岡県立吉原高等学校) 「GISと地理教育」(pp. 49-56)

はじめに: GISとは「地理情報システム(geographic information system)」の略。2009年版学習指導要領で初めて高等学校の地理においてGISを利用することが明記された。

地理教育におけるGISの普及過程: 1990年代初頭から始まった地理教育におけるGIS普及過程を概観。

新学習指導要領におけるGISの位置づけ: 地理Aと地理Bでの記述: 「地理的な見方や考え方及び地図の読図や作図、衛星画像や空中写真、景観写真の読み取りなど地理的技能を身に付けることができるよう、系統性に留意して計画的に指導すること。その際、教科用図書「地図」を十分に活用するとともに、地図や統計などの地理情報の収集・分析には、情報ネットワークや地理情報システムなどの活用を工夫すること」(p. 51)。地理歴史科の「地理A」、「地理B」と必修教科の「情報」との連携の必要性。

地理教育におけるGIS普及のための方策: 「50分完結、教科書準拠」の授業設計。汎用GIS教材の開発と頒布。著者の「いとちりポータル」http://www.itochiri.jp/を参照されたい。必要な設備・教具の充実。

 

中山修一(広島大学)・和田文雄(福山大学・広島経済大学)・高田準一郎(岐阜聖徳学園大学) 「持続発展教育(ESD)としての地理教育」(pp. 57-64)

はじめに: 「持続発展教育(ESD: Education for Sustainable Development)という新たな枠組みの中での「持続可能な社会の構築」に寄与する資質を育てることを目指した新しい地理教育」(p. 57)

地理教育に変革を迫る持続発展教育(ESD): 2002年にヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発のための世界首脳会議」で日本政府はNGO団体と共同で「国連持続可能な開発のための教育の10年(2005-14)」(United Nations Decade of Education for Sustainable Development: UNDESD)を提案し、同年の国連総会で承認。そしてユネスコが「国連ESDの10年」国連実施計画(UNESCO2005)を策定し、これも国連総会で承認を得、国連加盟国に対してESDの教育カリキュラムへの導入を要請。日本では、2005年に内閣府に「国連ESDの10年」関連省庁連絡会議が設置、『わが国における「国連ESDの10年実施計画』が策定される。これを受け政府は、教育振興基本計画(2008)において、ESDを「持続発展教育」と呼び、教育課程審議会はESDを「持続可能な社会の構築に寄与する能力を育てる学習」と位置づけ、新学習指導要領の関連科目の目標や内容にその実施を盛り込んだ。

「持続発展教育の実践において、もっとも大事な目標は、環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような考え方や行動の変革をもたらすことであり、それが持続可能な社会の構築の実現へとつながることを思考・行動規範として習得することである。」(p. 58)

国際地理学会(IGU)地理教育委員会とESD: 地理教育の国際的振興の手動期間は国際地理学連合(IGU)の地理教育委員会(CGE)。CGEは2007年に「持続可能な開発のための地理教育に関するルツェルン宣言を発表。ルツェルン宣言の詳細はpp.58-60参照。

日本におけるユネスコ教育の展開とESD: 「表1:ユネスコ教育の位置づけと国内外の教育関係の動き」(p. 61)参照。ユネスコ教育の詳細についてはpp. 61-63参照←日本のユネスコ共同学校計画の経緯についての議論がESDとどう関わっているのか少し分かりにくい。

 

竹内裕一(千葉大学) 「地域における社会参加と地理教育」 (pp. 65-73)

はじめに: 「地域における社会参加を視野に入れた地理教育実践の視点及び地理カリキュラムのあり方を検討」(p. 65)

社会科・地理教育における社会参加: 1947年にはじまった社会科で社会参加がどう位置づけられたかについての経緯を説明。現実問題として社会参加を実践するのが難しいことを指摘。

社会参加学習の必要性: 「社会参加学習を構想する場合、社会参加という行為自体は公的な性格を有するが、その行為選択に至るまでの価値判断や意思決定の過程は、きわめて私的な領域に属することをふまえる必要がある(竹内 2010)。つまり、社会参加とはあくまでも個人の自主的な自由意思に基づく行為であることを、教師はまず認識すべきなのである。」(p. 67)

よって社会参加学習は「あくまでも子どもたちの自主性・主体性を尊重し、自由な雰囲気の授業を構想する必要がある。社会参加することを自己目的化し、強制力の働く授業過程は戒められなければならない。」(p. 67)

地理教育における社会参加学習の視点: 「重層的地域形成主体」―異なる空間規模における重層的な地域形成主体のこと―の育成。その3つの資質についてはpp. 68-69参照。

社会参加の視点を導入した地理カリキュラムの素描: 「多焦点型内容構成」―社会問題の理解や解決にあたって、最適な学習対象空間を柔軟に設定すること。

「「多焦点型内容構成」は、地域における社会参加学習がめざす「重層的地域形成主体」を育むことに寄与する。」(p. 70)

まとめにかえて―授業づくりの方略―: 大事なのは「地域の大人と友に学ぶこと」。

「子どもたちの社会認識形成と市民的資質育成を促す上で重要なことは、多様な他者とのかかわりを通した多様な価値観へのきづきである。しかし、核家族化の進展や産業構造の変化、共同体的紐帯の喪失等により地域社会は大きく変貌し、子どもたちは多様な価値観の存在を知ることなく大人になっていく。その結果、現代の子どもたちの社会の見方や考え方は、非常に視野が狭く一面的なものになる傾向がある。社会参加学習は、子どもたちが多様な職業と価値観をもつ地域の大人たちと友に学ぶという協働経験の場を提供し、豊かな社会認識形成と市民的資質を育む貴重な場となるであろう。」(pp. 70-71)

 

泉貴久(専修大学)・岩本廣美(奈良教育大学) 「地理学会の社会貢献活動と地理教育」(pp. 74-81)

地理学会の社会貢献活動が必要な背景: 「地理学会が組織的・計画的に、非会員を対象として行う活動全般」(p. 74)。一般社会に地理学の有用性を伝える必要性と、高校での地理履修者の減少を食い止めるため。

日本地理学会の社会貢献活動の発生と現在までの経過: 1990年の日本地理学会秋季大会から非学会員への公開企画がもたれる。2001年以降地理教育公開講座が実施される。「地理教育公開講座」に注目。

社会貢献活動例(1): 児童・生徒対象の企画: 「科学地理オリンピック日本選手権」の上位成績者は日本代表として国際地理オリンピックに派遣。「私たちの身のまわりの環境地図作品展」

社会貢献活動例(2): 教員研修講座の取り組み: 小中学校の教員を対象とした研修会を不定期に実施。地理教育研究部会の実施。

まとめと今後の課題: 高校での地理履修者の著しい減少―「地理教育がこのような危機的な事態に陥った理由として、地理教育が単なる地名認知の手段とみなされ、社会との接点が見いだされていないという世間からの批判があったためではないかと筆者は考えている。地理教育の社会貢献が目に見える形でなされない限り、地理教育の未来はもはやありえないのではないか。」(p. 80)

 

金玹辰(北海道教育大学) 「地理教育の世界的動向: カリキュラム分析を通して」(pp. 82-89)

はじめに: 「世界の全体的な動向を明らかにすることで、日本の地理教育改革へのヒントを得ることを目的とする」ため、「イギリス、オーストラリア、韓国、香港という4つの国家・地域を取りあげ、カリキュラムの内容、学習方法、価値・態度という3つの側面からその動向を考察する。」(p. 82)

カリキュラムの内容構成の動向―概念・主題の強調―: イギリス、オーストラリア、香港、韓国の地理教育を概観。

学習方法の動向: 地理的探求と空間情報のためのICT活用の重視: 上記4カ国の地理教育でいかに地理的探求がおこなわれている概観。ICTの活用についても言及。

価値・態度の動向―持続可能な社会を形成する市民的資質の育成―: 「公民的資質」もしくは「市民的資質」の育成のためにいかに地理教育が行われているかアナライズしている。

おわりに: 以下の3点の発見。①「世界的には概念・主題中心の地理カリキュラムの構成が主流である」、②「地理的技能としてICT活用を強調している」、③「持続可能な社会を形成する市民的資質の育成は、学校教育における地理の役割である」。

※「~においては」という表現が多すぎる。

6月 22, 2012 · Pukuro · No Comments
Posted in: ☆社会科学

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