『英単語ターゲット1900』の使い方: 良い点と悪い点

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旺文社から出版されている「英単語ターゲット1900 5訂版」の中身を確認しました。改訂前はかなり酷評されていたようですが、5訂版は比較的好評のようです。

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ざっと見た限りでは、市販されているほかの英単語集より質が劣るこということはないかと思います。まどろっこしい言い方ですが、要するに「ターゲットはいまいちだから英単語集は●●の方を使った方がいいよ」と私が言うことはないってことです。ちゃんとした例文もついているし、「ターゲット」を使用している受験生は是非とも声を出して例文を読みながら英単語を覚えてほしいものです。

でも「ターゲット」を受験生に積極的に勧めるかというと、「う~ん、そう言われると…」となるところはあります。「ターゲット」がとくに悪いというのではなく、市販されている英単語集はどれもマーケッティング戦略から不完全なものを出版せざるをえない状況に陥っているため、「良い英単語集」が本屋に並ぶことはないからです。英単語集は持ち運びが簡単なコンパクトサイズでないと売れないというのが出版業界の常識です。だから収録される英単語の数も少なくして、見出し語を2,000語程度にせざるをえません。「ターゲット」の場合は見出し語を1,900語におさえて「1,900語覚えれば十分」と宣伝します。1,900語では不安な受験生には「見出し語の関連語・派生語もちゃんと覚えれば英単語は完璧」と触れ込みます。

要するに、英単語集をコンパクトにしたら必須英単語をすべて収録することができなくなってしまうにもかかわらず、コンパクトにしないと売れないから、本当は十分ではないのに、「これだけ覚えれば十分」と宣伝しているのが英単語集業界なわけなのです。

それでは「ターゲット英単語」の特徴をざっと見てみましょう。特徴は3点だそうです。

①「出る順」に並んだ厳選の1900語
「◆旺文社だからできること

『全国大学入試問題正解』を長年刊行しているので、信頼のおける入試問題データベースで分析ができます。これまで30年にわたる分析のノウハウがあるからこそ、自信を持って1900語を厳選できます。」(p. 7)

②中心的な意味を覚える。「一語一義」主義
「過去5か年の最新の大学入試問題をコンピューターで徹底分析、よく出題される見出し語を選び出し、それに対応する最も頻度の高い意味を掲載しました。」(p. 2)

「1つの英単語につき、入試で出題されやすい中心的な意味をまずは覚えてください。これを押さえておけば、文脈の中で意味を推測・判断できるようになります。」

improve を向上させる; よくなる

中心的な意味を核にして覚えることで、ほかの意味にも対応できます。」(p. 7)

③右ページには見出し語すべてに例文を載せている。
実際の入試問題に使われた英文から例文を作成しています。

②と③も細かい問題点はいくつか指摘できますが、今回は①にだけ注目してみます。疑問点は1つ。

そもそも大学受験に必須の英単語を2000語以下に厳選することが可能なのか?

English Studioで開催している例単コースで習得する英単語数は4,800です。9,000語ほどあった候補語をさらに厳選してやっと4,800語まで減らしました。「ターゲット」は派生語・関連語を含めても3,450語ほどしかありませんが、そんなに収録語が少なくてほんとうに大丈夫なのかちょっと調べてみました。

ひそひそ

まず派生語・関連語は無視して、見出し語1,900語だけ覚えようとした場合

これはかなりやばいです。例えば2番目に出てくる英単語を見てみましょう。

見出し語: relate を(…と)関連づける(to); (…に)関連する(to)

に「関連語・派生語」として「relation 関連; 親類」と「relative 相対的な; 親類」が収録されています。relativeについては「相対的な」という意味で別ページに見出し語で掲載されていますが、「関連語・派生語」を無視しているとrelationという重要語をチェックし損ないます。それに「関連; 親類」という意味も無理矢理という感じです。relateが「関連づける」、relativeが「親類」だからそう訳したのでしょうが、普通は「relation=関係」となります。それに「親類」のことをrelationとはあまり言いません。

<「関連語・派生語」は例文もついていないので覚えにくいので無視>なんてことをしたらどうなるかは、「ターゲット」巻末のINDEXを確認したらすぐわかります。見出し語だけ太字になっていますが、太字でない単語にも重要語が満載です。aで始まる英単語だけ見てみると例えば、

abound; absolutely; accident; accuracy; accusation; achieve; action; activity; additional; adjustment; administer; adoption; aggression; agreement; amazing; ambiguity; analyze; analyst; annually; anxiety; apology; appealing; applaud; application; appointment; approval; argument; arrangement; assembly; assertion; assignment; assistance; association; atmosphere; attention; attraction; authorize; availability; avoidanceなどが見出し語になっていません。

しかし、これらの英単語も必修英単語なので「ターゲット」の使用者は見出し語1,900語だけで十分なんて思いこまず、「派生語・関連語」も必ず覚えないといけません。

ということで、「ターゲット」の利用者は見出し語だけでなく、「派生語・関連語」も覚える、としなければいけませんが、「派生語・関連語」には例文がついていないので非常に覚えにくいです。見出し語との関連で覚えようとしても見出し語との意味の関連が低ければ容易には暗記できません。例えばSection 1(pp. 18-43)だけ見てみても、

relate (を関連づける)-relative (相対的な; 親類)
consider (を見なす)-considerable (かなりの)
consider (を見なす)-considerate (思いやりのある)
concern (心配する)-concerning (…に関して)
allow (を許す)-allowance (手当、小遣い)
affect (に影響を及ぼす)-affection (愛情)
subject (話題)-subjective (主観的な)
material (材料)-materialism (唯物論)
physical (身体の)-physics (物理学)

のように、どう意味を関連づけて覚えればいいのかわからない「派生語・関連語」が多数あります。

ついでに指摘しておきますが、「ターゲット」は「一語一義主義」と言いながら、各英単語に多数の意味を載せています。中心的な意味を覚えれば文脈の中で他の意味も推測・判断できるようになると述べていますが(p. 7)、どうすれば

subjectを「話題」とだけ覚えて、「学科、主題、被験者」(p. 32)という意味も推測できるようになるのでしょうか。重要な多義語は「システム英単語」のように多義語の章を設けて複数の意味を覚えるようにし、そうでない英単語についてはほかの意味をいくつも羅列しない方がよいかと思います。[issue 問題(点)]からissueには「発行(物)」・「発表」(p. 32)という意味もあることは推測できないし、
articleの「記事」という意味から「条項 ・品物」 (p. 32)
figureの「数字」から「姿・人物・図(表)」 (p. 32)
matterの「問題」から「事態・困難・物質」 (p. 34)
rightの「権利」から「右・正しいこと」(p. 34)
accountの「説明」から「勘定・口座」(p. 36)
もどうやったら「中心的な意味」から違う意味も予想できるのでしょうか。

また、「派生語・関連語」も覚えようとすると、例文がついていないので覚えにくいだけでなく、収録数をただ増やそうとしたために、見出し語の派生語というだけの理由で大学入試にはでてきそうもない難関語も覚えさせられる羽目に陥ります。

以下はその代表例です。

「ターゲット」にしか載っていない英単語で、「これを載せるか?」という英単語例
acidity, aesthetics, appellate, appetizer, artistry, assignee, asteroid, avian, budding, bumper, cavity, cortex, disembark, donee, drainage, drifter, embarkation, epoch-making, forcible, formulaic, germicide, germinate, graveyard, haven, inherence, mammalian, meritocracy, microbe, microbial, orphanage, pant, parasitic, peninsular, piercing, pilgrimage, pollen, pollinate, ponderable, prosaic, proverbial, shrinkage, slavish, solemnity, spoilage, sprawl, therapeutic, toxicity, venturesome, versify, viral

ためしに高校の英語の先生にこれらの英単語の意味を尋ねてみてください。半分以上答えられませんから。

このように「派生語・関連語」に試験に出そうもない英単語が数多く収録されているとなると、唯一の対策は見出し語をしっかり覚えて、かつ「派生語・関連語」は確認をして重要そうな英単語だけ覚える、とするしかないように思えます。

これで一件落着(^o^)

「ちょっと待ったあ!!」

ちょっとまった

実はほかの英単語集には必ず収録されているけど、「ターゲット」には載っていない重要語はけっこうあります。 「なんで載せていないの?」というのばかりです。

ターゲットに載っていない重要英単語例
ability, aboard, accept, acceptable, acceptance, accessible, active, advice, affair, alike, alive, amount, announce, announcement, athlete, athletic, athletics, atom, awake, background, barely, base, basic, basis, belong, billion, bite, board, bomb, borrow, bottom, brain, branch, brave, broad, broadcast, calm, cancer, career, careless, case, celebrated, ceremony, check, cheer, cheerful, citizen, clerk, climate, closet, company, competitor, considerably, continent, continental, continual, continuous, cosmos, count, cousin, crew, crowd, customer, damage, dawn, debate, decision, deep, definite, definitely, delay, delivery, department, destination, develop, development, diet, disadvantage, discuss, discussion, disease, draw, dull, earthquake, edge, educational, effort, elderly, electrical, electricity, empty, enemy, enter, entry, environmentalist, era, escape, essence, exchange, exercise, expenditure, factor, fail, failure, fashion, fat, feed, female, fever, fire, firm, fix, flood, follow, following, former, fortunately, found, foundation, framework, frank, fund, genius, gift, goods, grade, guess, hardly, harmless, heaven, height, household, huge, hurt, hydrogen, impact, impolite, inappropriate, individuality, instance, intent, introduce, introduction, invent, invention, inventor, irresponsible, item, knowledge, labor, laborious, lack, last, lately, lead, lecture, leisure, length, literacy, lively, lord, loss, lung, mad, mainly, meaning, measure, mind, missing, mistake, moral, morality, moreover, mostly, murder, muscle, muscular, namely, narrow, nation, natural, nature, nearly, obviously, optional, order, own, oxygen, passage, passenger, path, pause, pay, period, planet, pleasant, pleasure, polite, population, poverty, preservation, press, prison, prisoner, promising, protect, provided, quarrel, quarter, raise, rank, rapid, rapidly, rate, reflection, regardless, remain, reply, research, respectable, rest, risk, risky, role, rule, save, saving, scared, scholar, scholarship, score, seed, senior, sentence, serious, serve, service, settler, sharp, sheep, shelf, shortage, shy, signal, silly, sink, site, smooth, soil, sort, soul, spirit, square, standard, statue, strength, strengthen, strike, striking, stupid, support, sweat, tale, talent, talented, task, taste, tax, technical, technique, terrible, theme, tight, tighten, tip, tough, tradition, traditional, traffic, transportation, trial, trouble, troublesome, volume, wage, weigh, weight, wheat, wheel, youth, youthful

なぜ「ターゲット1900」ではこれら重要語を収録しなかったのでしょう? population(人口)やtradition(伝統)といった超重要語を見落としちゃやっぱりだめですよ。

 

12月 29, 2012 · Pukuro · 2 Comments
Posted in: ×受験英語

2 Responses

  1. mt - 9月 20, 2013

    「ターゲットに載っていない重要英単語例」の多くはターゲット1400に収録されているようです。
    私はターゲット1400と1900ではレベルが難易度が違うと認識しているので、比較的簡単で高校教科書にも載っていたり、中学でも習う単語の派生語は1400に載っていると考えていました。
    他の単語帳もレベルに応じてシリーズで出すことはよくあることだと思います。
    簡単(基礎的)な単語だから省いたという考えもあるかと思います。
    「ターゲット1900」は超重要語を見落としているということになるんでしょうか?
    1900にこれらの単語もいれるべきなのでしょうか。

  2. Pukuro - 9月 21, 2013

    おはようございます。

    「キクタン」とかもシリーズで出していますが、こういうのってほとんど意味ないですよね。売り上げ数を増やすために出版社もここまでやるかという感じです。必修英単語をすべて網羅した英単語集を一冊だけ出せばいいのに、なぜレベル別と称して複数の英単語集を受験生に買わせる必要があるのでしょうか。

    学校で「英単語ターゲット1900」を使っているという高校生はうちの生徒さんにもよくいるのですが、そういう場合は「ターゲット1900」では見落とされている重要語のリスト集(例文つき)を使って補うようにしています。

    あなたの言うことが正しければ、「1900」だけでは不安な人は「1400」もやってみれば問題は簡単に解決できそうですが、2つとも使うというのは無駄が多すぎます。アルファベットのLではじまる英単語を見てみましょう。「1900」「1400」ともにlabor, laborious, lecture, literacy, lord, lungといった他の英単語集にはふつう載っている英単語が収録されていません。2冊使っても収録語は網羅的(collectively exhaustive)ではないわけです。

    収録語が網羅的でないにもかかわらず、2つの英単語集は収録英単語が重複しています。例えば、「1900」にはLで始まる英単語で収録されているのは以下の通りですが、その多くは「1400」にも載っています(太字の英単語)。
    laboratory, lag, lament, lamentable, landmark, landscape, latter, launch, laundry, law-abiding, lawsuit, lawyer, layer, league, leak, lean, leap, legacy, legal, legality, legislation, legislative, legitimacy, legitimate, lend, lessen, liability, liable, liberal, liberate, liberty, librarian, license, likelihood, likely, likewise, limb, limit, limitation, linguist, linguistic, linguistics, liquid, literal, literally, literary, literate, literature, litter, liver, load, loan, locate, location, leg, logic, logical, long-term, loyal, loyalty, lure, luxurious, luxury

    この2冊は相互補完的ではないのでこれだけ収録英単語が重複しているわけです(つまりmutually exclusiveではない)。同じ英単語を繰り返し覚えても構わないというのであれば、「1900」には載っていない基礎語は「1400」で確認するということでかまわないと思います。がんばってください。

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