「間違った意味で使われる言葉ランキングの第1位が「ハッカー」ですって?

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不思議な記事を見かけました。

間違った意味で使われる言葉ランキング、第1位は「ハッカー」
株式会社小学館は15日、国語辞典「大辞泉」編集部による「間違った意味で使われている言葉ランキング」「言い間違いされる言葉ランキング」を発表した。

 調査は、大辞泉編集部が選んだ50の言葉について、「普段、あなたが次の言葉を使うとき、どのような意味で使っていますか? 本当の意味かどうかは問いません」という質問で、「よく見かける、本来と異なる意味」と「本当の意味」を二択で提示。本来と異なる意味の回答が多かった順のランキングを発表した。調査方法はインターネット調査で、調査期間は9月20日~23日。調査対象は15歳以上の男女1200人。

 間違った意味で使われている言葉の第1位は「ハッカー」の77.4%。ハッカーには本来、不正行為をする人という意味はないが、7割以上の人が「コンピューターに侵入し、不正行為を行う人」を選んでいる。

 大辞泉編集部では、不正行為をする人という意味の「クラッカー」と混同されていると思われるとして、新聞・テレビの報道などでも悪い意味で「ハッカー」が使われる例が見受けられると指摘。2つの言葉の知名度・浸透度の差から、わかりやすさを重視してあえて「ハッカー」を使うケースも考えられ、新しいだけに意味の変化が起きやすい言葉なのかもしれないとしている。

 以下のランキングは、2位が「確信犯」(73.0%)、3位が「他力本願」(68.8%)、4位が「破天荒」(68.3%)、5位が「姑息(な手段)」(62.6%)など。

えっ、ハッカー(hacker)って「コンピューターに侵入し、不正行為を行う人」って意味じゃないの? このパソコンに入っている古くさい辞書で「ハッカー」を調べたら、

情報通信/1991年
本来は「切り刻む人」の意であるが、俗語ではコンピュータ用の高級言語、とくにLISP(リスプ)を自由に駆使して複雑なプログラムに熱中する人をいう。しかし熱中するあまり、コンピュータ・ネットワークを利用して他人のコンピュータ・プログラムの利用可能性をチェックし、無断で使用するものが話題となったため、新聞などではコンピュータへの不法侵入者の意で用いられることが多い。アメリカでは大学や軍、企業のデータベースに侵入し逮捕された例もあるほか、日本でも事例がふえつつあり、情報化社会の大きな問題となっている。

って出てるんですけど(´・_・`)

いそいそとほかの辞書を紐解いて調べてみると…

三省堂 大辞林
ハッカー(hacker): コンピューター熱中している人。創造的プログラムを組むのを喜びとする人や、不法に他のコンピューター-システム侵入してデータ改変したり、無断コピーしたりする人をいう。

Cambridge Advanced Learner’s Dictionary
hacker: someone who hacks into other people’s computer systems

Longman Dictionary of Contemporary English
hacker: someone who secretly uses or changes the information in other people’s computer systems

Merriam-Webster Dictionary
hacker: a person who secretly gets access to a computer system in order to get information, cause damage, etc.

どの辞書にも「コンピューターに侵入し、不正行為を行う人」という意味が書かれていました(´-ω-`)

小学館の「大辞泉」ではハッカーは何て意味になっているんだろうか? 図書館に調べに行くのも面倒だなあと思っていたら、goo辞書は「大辞泉」のデジタル版を使っていることを発見。さっそく検索すると、以下のように説明されていました。

コンピューターやコンピューターネットワークに精通した人。高い技術力や豊富な知識をもち、プログラムを解析して巧妙に改良したり、ネットワークの安全性を検証したりする者を指す。

[補説]コンピューターに侵入し、悪意の強い不正行為を行う者はクラッカーと呼んで区別することが多い。

たしかにhackerの元々の原意はそうでした。「大辞泉」で説明されているようにhackerは良い意味にだけ使い、「コンピューターに侵入し、不正行為を行う人」はcrackerと呼ぶべきと主張している人もいます。例えば、Eric S. RaymondのThe New Hacker’s Dictionaryではhackerをa clever programmerと定義しています。彼はhackerには5つのタイプがあると述べています。

A person who enjoys learning details of a programming language or system
A person who enjoys actually doing the programming rather than just theorizing about it
A person capable of appreciating someone else’s hacking
A person who picks up programming quickly
A person who is an expert at a particular programming language or system, as in “UNIX hacker”

興味のある方は、The word “hacker” gets used in a pejorative sense by journalists an awful lot. Some people think this is perfectly reasonable; others find it offensive, and recommend an alternative term for that meaning. Read on to find out why.という記事もお読みください。

hackerという単語は「~を斧・なたでたたき切る」という意味のhackの名詞形(なた・斧で切る人)として13世紀頃から存在していました。それを1960年代にMITの学生がわずかの道具で何でも作り出すプログラマーという意味で使い始めました。今でもIHTFPというグループがThe MIT Gallery of Hacksなるものをネットに掲載しています。

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しかし1980年代半ばから他人のコンピューターに不正に侵入するという良くない意味で使われ始めました。それがすぐに広まり、ほとんどの人がそういう意味でしか使わなくなりました。それに対して一部の人たちが、hackerは良い意味にだけ使うべきで、「コンピューターに侵入し、不正行為を行う人」はcrackerであって、hackerではないと声高に抗議しているわけです。

彼らが不満に思う気持ちはわからないこともないですが、小学館の「大辞泉」編集部が彼らに主張に乗っかかり、ハッカーを「コンピューターに侵入し、不正行為を行う人」という意味で使っている人に対し、「ハッカーをそういう意味で使うのは間違いだ、クラッカーと混合している」と批判するのはいかがなものでしょうか。「クラッカー=不正行為をする人」なんて日本ではまったく市民権を得てませんよ。

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アメリカでもhackerはふつう「コンピューターに侵入し、不正行為を行う人」という意味で使われます。小学館の国語辞典編集部のスタッフに「お前、日本語間違ってるぞ」と注意されるいわれは一切ありません。

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10月 17, 2013 · Pukuro · One Comment
Posted in: ■英単語豆知識

One Response

  1. a - 10月 21, 2013

    理解されてるようですが、この誤用はかなり不愉快なんですよね。Eric S. RaymondのThe New Hacker’s Dictionaryではhackerをa clever programmerという扱いは当然で、crackerとは別にして扱ってる。この誤用によって優れた連中がゴミクズ同然の連中と混同されるという悪影響が出たからなんだ。敬意を持って接するような相手に使う言葉を軽蔑に値する連中に使うようになったんだから不満が出てくるのは当然なんです。簡単にすれば、尊敬される存在をエタヒニン扱いされたような屈辱だからね。

    日本で市民権が得られてないのは誤用を平気で使い続けた悪影響ですし、みんなが認めてるからいいんだ的な解釈は同意できないですね。

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