オバマ大統領が黒人少年射殺事件で日本に嫉妬のウソ

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TBS Newsで不思議なニュースを見かけました。

アメリカのオバマ大統領は、ミズーリ州の黒人少年射殺事件で発砲した白人警察官が不起訴となったことに対しての暴動について、「犯罪行為だ」と非難しました。「建物を燃やし、車に火をつける。物を壊して住民に危害を加える。これは破壊行為で、正当化されない犯罪行為だ」(アメリカ オバマ大統領)オバマ大統領は暴動について、このように述べ、「やった人間は訴追されるべきだ」と厳しく非難しました。一方で、「日本のように国民の大半が日本人という国では、このような問題は起こりにくい」と述べ、多様な人種が集まるアメリカならではの社会問題だと指摘黒人を中心に警察官の対応が人種によって異なるという深く根ざした不満があることに一定の理解を示した上で、「短絡的な選択をせず、地元自治体との対話など、長期的な選択をすべきだ」と沈静化を呼びかけました。(26日10:21)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2358477.html

アメリカ大統領が①日本は単一民族だから安全だ、②アメリカは「多様な人種が集ま」っているから人種問題に起因する事件が起きる、と言っているの? それって問題じゃない?

2014年8月9日にミズーリ州ファーガソンで、28歳の白人警官が18歳の黒人男性を射殺します。黒人少年の名前はマイケル・ブラウン・ジュニア(Michael Brown Jr.)。事件の8日前に高校を卒業したばかりでした。高校生の頃、とくに素行が悪かったわけではないという報道が出ています。身長193cm、体重132kgの巨漢であるブラウンのことを担任の先生は「温和な巨人(gentle giant)」と評していました。ちなみに警官のダレン・ディーン・ウィルソン(Darre Dean Wilson)も身長193cmと大柄です。

無抵抗の黒人少年に銃を撃ったという証言もあれば、警官が自衛のために銃を撃ったという証言もあります。真相はいまだ不明ですが、2人が出会って90秒以内でブラウンは射殺されています。いろいろな記事を読んだかぎりでは、コンビニでシガリロ(Cigarillo, 細い葉巻)の盗みがあり店主が警察に通報。ウィルソン警官はもう一人の警官と共にすぐに出動し、歩いている犯人のブラウンを見つけます彼を調べようとしますが、ブラウンは抵抗しウィルソンが発砲。撃たれたブラウンが逃げたところ、彼の背後を打ち抜き即死した、という感じでしょうか。
アメリカ・ミズーリ州黒人青年射殺事件 拡大する暴動とこれまでの経緯

BrownWilson

11月25日にウィルソン警官は不起訴が決定。それに怒った人たちが抗議デモを全米各地で起こし、暴動も生じます。上のオバマ大統領の発言は暴動直後に行われていますが、「「日本のように国民の大半が日本人という国では、このような問題は起こりにくい」と述べ、多様な人種が集まるアメリカならではの社会問題だと指摘」という発言について2ちゃんねるでかなりのリアクションがありました。「痛いニュース」、「大艦巨砲主義!」、「ジャックログ」、「保守速報」、「きま速」、「watch@2ちゃんねる」、「Internet Walkers!」、「プラスアルファ」、「モッコスヌ~ン」、「政経ちゃんねる」ら多数のまとめチャンネルでも取り上げられています。

このTBS Newsの記事を読んだ日本人の多くが、オバマ大統領が治安のよい単一民族国家の日本を引き合いに出して、アメリカは大量の移民を受け入れる多民族国家であるがゆえにこのような問題が起きると発言した、と理解しました。以下、2ちゃんねるでの発言。

●治安のよい日本は単一民族だから素晴らしい
「なんで日本出すのよ(笑) そんなに日本の治安がうらやましいの?(笑) 」

「やっぱ折角日本人ばっかの日本国なんだから、このままじゃなきゃな 」
「なんで日本出すのよ(笑) そんなに日本の治安がうらやましいの?(笑)」
「>日本のように国民の大半が日本人という国では、このような問題は起こりにくい

つまり、世界の国々は、日本のようなほぼ単一民族国家を「羨ましがっている」という事だな。
それだけ、単一民族は色々な意味で問題が少ない、と。
裏を返せば、移民を入れろと騒ぐ輩は、すべて売国奴と呼んでいいという事だ。 」

●移民は問題だ
「移民の弊害を明確に認めたね 一般人はとっくに知っていたことだが 」

「移民は駄目だという事ですね。 」
「これは暗に日本に移民を入れない方がいいって助言してんだろw 」
「オバマわかっとるじゃないか。未来の日本が想像出来る。外国人受け入れ反対 」
「つまり、移民はやめとけと。」
「つまり移民は害虫ってことですね 」
「移民の国が移民政策を否定しました!」
「移民政策は失敗ってことでおk 」
「こいつって移民容認みたいなスタンスじゃなかったっけ
こんな移民全否定発言して大丈夫なのか? 」
「移民は受け入れるな、っていうアメリカからのメッセージ 」
「移民政策は間違いだったと移民の子孫が言ってる訳ですね 」
「移民反対の大義名分ができてしまったwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 」
「移民には百害あって、一利なし!!! ! by オバマ」
「移民はあかんということだ」
「移民なんていれたら暴動がおこるよってことだな」
「移民の弊害を明確に認めたね一般人はとっくに知っていたことだが」
「実にタイムリーだな日本の移民反対派へオバマからの援護射撃w」
「これ、本気で言ってんの?

オバマは不法移民に片っ端から国籍あげようとしてたじゃん。
社会問題を増やす気だったのかよw
こんなこと言われて、国民は「そうだよな」って思うとでも?
さすがは戦後最低大統領だな。」

みんなオバマの発言を誤読しています。アメリカ大統領がアメリカも日本みたいに単一民族だった方がよい(注: 日本は単一民族国家ではありませんが)なんて事を言うわけがありません。移民も制限することはあっても、移民制度自体に反対するわけがありません。「自分の国を否定する国のトップってのも凄いな 」という発言も2ちゃんねるで見かけましたが、アメリカ大統領が自分の国を否定するわけがないわけです。オバマ演説の内容を確認しましたが、日本人について言及した発言の前後は以下の通りです。

Now, I appreciate your patience because I know you came here to talk about immigration, but this is relevant because part of what America is about is stitching together folks from different backgrounds and different faiths and different ethnicities. That’s what makes us special, and… and, look, let’s face it, sometimes, that’s hard. Sometimes that’s hard to do. But it’s worthwhile. It’s worth doing. You know, if you go to…  I was just traveling in Asia. You go to Japan, they do not have problems with certain folks being discriminated against because mostly everybody is Japanese. You know, I mean… but… but here, part of what’s wonderful about America is also what makes our democracy hard sometimes. Ahh… Because sometimes we get attached are a particular tribe, a particular race or a particular religion, and then we start treat other folks differently. And that sometimes has been a bottleneck to how we think about immigration. If you look at the history of immigration in this country. Each successive wave, there’ve been periods of where the folks who are already here suddenly say, “I do not want those folks”, even though the only people who had the right to say that are some native Americans.
(http://www.c-span.org/video/?322915-1/president-obama-remarks-immigration  11:46-13:22)

正確に和訳をするのは面倒なので「超訳」します。

あなたたちが移民について話をしに来たことはわかっていますが、もう少し今回の黒人少年射殺事件について、話を聞いてください。ふたつは関連するからだ。なぜならアメリカという国は、異なるバックグラウンド、異なる信仰、異なるエスニシティをもつ者たちを縫い合わせることでもあるからだ。だから我々は特別なのだ。それが時として大変なことは認めよう。時にそれは困難なことだ。しかしそれは価値あることだ。やる価値のあることだ。ねえ、君たちが行ったら… 私はちょうどアジアを訪問したばかりなのだが、あなたたちが日本に行くとします。日本人は(日本人以外の)差別を受けている人々と問題を抱えていない。だってたいていの場合みんな日本人なんだから(笑い声)。えーと、つまりアメリカの素晴らしいことが時として民主主義を大変にしているんだ。なぜなら時として我々は特定の部族、特定の人種、特定の宗教に愛着を感じ、ほかの人を違った扱いをし始める。そして時としてそれが我々が移民について考える上での障害になる。この国の移民の歴史を見ると、次々と起こる移民入流ですでに住んでいる人々が突然こう言い始める時期がある。「こいつらはもういいや」と。そういうことを言う権利があった人々はアメリカ先住民のみにもかかわらずにだ(拍手)

こんな感じの発言です。この発言は11月25日にシカゴで開催された移民活動に関する講演の中での発言です。当然、オバマはこの演説で移民を支持します。演説中に移民反対派からヤジも受けます(23:20頃)。アメリカ合衆国が多民族国家であることは誰も否定できない「既定」かつ「価値」あるものということを前提とした上の発言です。日本人の例を出した後に聴衆から笑い声が出ていますが、笑った人には下のように聞こえています。

アメリカは多民族国家であるからこそその民主主義は素晴らしく、かつ追及する価値があるのであって、今回の黒人少年射殺事件も米国が偉大な国であるからこそ生じたのだ。そりゃあ日本は平和かもしれないよ。でも見てみなよ。あいつらはみんな同じ顔をしているんだから。そんなの嫌だろう

少しデフォルメしすぎですがニュアンス的にはこんな感じです。「そりゃあ日本みたいな単一人種の国家は楽だよ。でもそんな国には住みたくないだろう。だったら我々は我々が直面している今の問題に正面から立ち向かっていこうよ。」

これがオバマメッセージの真意です。

TBS Newsの記事は誤訳でありませんが、文脈を無視して一部だけを訳出しすると誤解が生じる好例ですね。

 

12月 1, 2014 · Pukuro · No Comments
Posted in: ☆日本問題

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