upstairs/downstairsの語法

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『魔女の宅急便』での場面です。お客のひとりがおソノのお店に赤ちゃんのおしゃぶりを置き忘れます。キキがそれを渡しに行って戻ってくると、おソノはキキにこう言います。

「あっ 待って
寄ってかない? お礼もしたいしさ
こっちよ
座って… コーヒーがいい?」

英語版ではこう訳されています。

Wait a minute.
I really must do something to show you my thanks.
Follow me.
Bakery’s downstairs, upstairs is home.
Sit down and relax.
Would you like some hot chocolate?

おソノ

「コーヒー」がhot chocolateに変わっていますね。hot chocolateは「ココア」のことです。冷たいココアだとiced chocolateになります。英語版ではオリジナルにはないセリフがつけ加えられています。

Bakery’s downstairs, upstairs is home.

というセリフです。bakeryは「パン屋」のことです。ざっくばらんに訳すると「パン屋は下、上が自宅だよ。」

downstairs/upstairsの語法が2点において興味深いです。まず第1にここでdownstairsは形容詞、upstairsは名詞として使われていることです。upstairs/downstairsの品詞は何なのでしょうか。第2にupstairsは末尾が複数形を表わすsにも関わらず、upstairs are…ではなくupstairs is…となっていることです。名詞のupstairs/downstairsは語尾が-sでも単数扱いとなるのでしょうか。

upstairs/downstairsの品詞

upstairsとdownstairsという単語は名詞・形容詞・副詞として使います。元々はupという副詞とstairsという名詞がくっつき、「上の階に」という意味の副詞で使われていましたが、次第に形容詞、名詞としても使われるようになりました(downstairsも同じ)。upstairsは「上の階」、「上の階の」、「上の階に」、downstairsは「下の階」、「下の階の」、「下の階に」という意味になります。I’ll be upstairs. だと形容詞扱いで「上にいるから」、go upstairsだと副詞で「上の階に行く」という意味になります。ちなみに I’ll be upstairs. はこのセリフを言っている時点では上の階にいません。でも I’ll be upstairs, so call me when you want me to help you with anything. と言う時、今から上に行くことは確定しているので「上にいるだろうから」ではなく、「上にいるから」という訳になります。upstairsはメタファーとしても使われます。the man upstairsはGodを指します。kick A upstairsは「名前だけの地位に昇進させる」という意味になります。単語の末尾が-sだとつい名詞の複数形と勘違いしそうですが、「下の階のトイレ」はa downstairs bathroom、「上の階のトイレ」はa downstairs bathroomになります。

upstairs/downstairsの名詞の用法

upstairsとdownstairsはupstair/downstairの複数形ではありません。「階段」という意味stairsが常に複数形の形で使われるのと同じようにupstairsとdownstairsは常に複数形の形をとります。形としては複数形ですが、その用法については辞書で説明が異なります。Weblioでは単数扱いの不可算名詞であると説明されています。プログレッシブ英和中辞典では上の階を1つさす時は単数扱い、上の階全部を示す時は複数扱いと記されています。2階建ての建物の1階にいる時は上の階は1つだけなので常に単数扱い、3階建て以上の時は2階だけをさす場合は単数扱い、複数階を指す場合は複数扱いになるということです。

はてさて、Weblioとプログレッシブのどちらの説明が正しいのでしょうか。困ったときはグーグル先生ということで、

“the upstairs is”
“the upstairs are”
“the upstairs was”
“the upstairs were”
で検索してみたところ、検索数はそれぞれ231件、242件、367件、239件でした。the upstairsは単数でもThe floors of the upstairsのような形だと「床」という意味のfloorが複数形なので動詞はare/wereになりますから、「ofの限定」のない形も確認してみました。

“if the upstairs is”
“if the upstairs are”
“if the upstairs was”
“if the upstairs were”
検索数はそれぞれ176件、14件、75件、18件になりました(2015年3月22日現在)。圧倒的に単数形のbe動詞が続いていますね。ちなみに仮定法が使われているとthe upstairsが単数でも動詞はwereになるので注意。

どうも単数形で使われることが圧倒的に多いけど、複数形扱いする場合もあるという結論になりそうです。英英辞典を確認するとCambridge Dictionaries OnlineThe American Heritage Dictionaryでは単数扱いだと説明されていますが、Dictionary.comではusually used with a singular verbと説明されています。usuallyということは「たまには」複数形で使うことも認められているわけです。ただし、upstairs/downstairsの用法がイマイチわからない場合は、続く動詞は単数形にしておく方が無難なようです。

 

3月 22, 2015 · Pukuro · No Comments
Posted in: ■英単語豆知識

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