なぜ『「超」英語法』は正しいのか: 聞ければ話せる

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経済学者の野口悠紀雄氏は『「超」英語法』でスピーキングよりもリスニングの方がはるかに大事であると主張しています。

野口悠紀雄 超英語法

◆話す機会よりも聞く機会の方がはるかに多い

「「口頭英語を実際に使う場」というのは、多くの場合、話す場ではなく、聞く場なのである。実用英語においては、話す機会よりも聞く機会のほうがはるかに多いのである。」(p.28)

◆聞くよりも話す方が楽

「会話をしている場合は、相手が言うことを理解できなければ意味がない。…しかも、多くの場合に、話している相手をコントロールすることはできない。聞くのが難しい最大の理由は、ここにある。自分が話す場合には、自信のない表現や言葉は使わなければよい。主導権はこちらにある。しかし、聞く場合には、主導権は相手にある。」(p.29)

◆聞ければ話せる

「「話すより聞くのが重要」である第2の理由は、「聞ければ、ほぼ自動的に話せる」ことだ。

多くの人は、「聞けても話せなければ実用にならない」と思い込んでいる。しかし、相手の言うことを完全に理解できれば、格別の努力をしなくとも、ほぼ自動的に話せるのである。」(p.30)

「相手が言っていることをそのまま繰り返すだけで会話が成立することもある(Oh, do they really?のように)。また、Yes, Noを表明するだけで会話が進行することもある(Yes, indeed. や No, I don’t think so. あるいは、That’s right. Exactly. のように)。さらに、正式な文書にせず単語を並べるだけでも、自分の意見が言えるときもある。…だから、聞くことが完全にできるようになれば、相手に依存して、あるいは相手を真似するだけで、自動的に話すことができるのである。」(pp.31-2)

◆聞く訓練は1人でできる→英会話学校に行く必要はない

「「聞く訓練に依存すべし」という観点からすると、多くの英会話学校でやっている授業や、ラジオ、テレビの番組の英語の勉強法は、間違っている。

聞く訓練においては、教師の役割が少ない。だから、英語学校としては、売り物にならない。「話せるように訓練します」と言うのは、「供給者の論理」なのだ。それにはまり込まないことが重要である。」(p.37)

以下、感想。

これもとくに補足説明の必要のない主張です。海外で生活して一番困るのはスピーキングではなくてリスニングです。スピーキングでは最悪、片言英語でもなんとかなりますが、リスニング力が低くて相手の言っていることが聞き取れないとなすすべがありません。「聞き直せばいいんじゃないの?」と言われそうですが、Pardon? (ごめん、もう一回言って)と返答してまた言ってもらっても、また聞き取れないということがよくあります。外国人が日本人に「すいません、もう一度言ってください」と言ってきたら、その日本人はゆっくりしゃべってくれますが、英語ネイティブは同じスピードで言い続けるから何度聞いてもわからないものはわからないからです。ゆっくり英語をしゃべってくれるネイティブは英会話学校にしかいないと思って間違いないです。

ちなみに私は言いなおしてもらう時は、I beg your pardon?やPardon?ではなく、語尾を上昇調でI’m sorry?と言ってました。お店でウエイターの言っていることが聞き取れない時とかは、I’m sorry? くらいの方が重々しくなくていいですね。

ところで野口氏の「『超』英語法」は以下の構成になっています。講談社文庫に収録されていますので興味のある方はぜひ購入して読んでみてください。ただし第3章と第4章の「これさえ分かれば英語は聞ける」はあまり納得できませんでした。

第1章 実用英語の勉強における4つの間違い
1-1 英会話学校に通う間違い

話す訓練よりも聞く訓練の方が大事。聞く訓練は1人でできるから英会話学校に行く必要はない。

1-2 「話せるようになりたい」と考える間違い
聞けば話せるという議論。

1-3 「仕事に使う道具」という視点がない間違い
英会話学校で日常会話を学んでもあまり意味がない。それよりも仕事に役立つ英語を習得しよう。

1-4 単語に分解したり翻訳したりする間違い
英単語の丸暗記と翻訳ベースの英語学習を批判。

第2章 どこに注力しどこで手を抜くか
2-1 目的をはっきりさせる

英語の勉強を進めるには出来るだけ具体的な身近な目標を設定すると良い。目的がはっきりしていると勉強が長続きするし、どういう勉強をしたらよいかがはっきりしてくる。

2-2 どこで手を抜くか: スラングと正確な発音
ある程度以上の知的水準の人が正式な場で用いる英語は完全に聞き取れるようになる必要がある(例えば、テレビやラジオのニュース英語や大学の教室で外国人の先生が話す英語)。スラングや方言は聞き取れなくても仕方がない。正確な発音ができなくてもかまわない。

2-3 どこは完璧にやるか: 速い話も聞けるように
普通の速さの英語は聞き取れるようにならないといけない。

2-4 どこは完璧にやるか: 専門用語が重要
自分の専門の専門用語をマスターする必要性。

2-5 これからの実用英語は文章英語
インターネット時代では正確な英文を書く必要が生まれている。「話す」よりも「書く」ことの方が大事。

2-6 どの英語なのか
専門的な英語、正式な英語、非正式な英語の区別について。

第3章 これさえ分かれば英語は聞ける(その1)
3-1 英語リスニングの急所

母音やr/l, th/sなどの子音を正確に発音し、聞き取れるようになるのも重要だが、もっと大事なのは「子音の消失」、「連結」、「変化」のルールを習得すること。

3-2 子音の消失
b, d, g, k, pなどの破裂音は語尾にくると発音されない。暗いエルは聞こえない。

3-3 t音の変化
tやdが母音に挟まれる場合、rに聞こえる。後にくる単床との関係で、tがrに聞こえることがある、など。

3-4 子音+母音になる場合に連結
子音+母音になる場合に、連結して発音される。

3-5 動詞や人称代名詞の短縮形や連結
I’m, I’veなど。

3-6 3語以上の連結
Get out of herやI wannaなどの発音。

第4章 これさえ分かれば英語は聞ける(その2)
4-1 リズムとアクセント

文章のリズムと単語のアクセントについて。

4-2 日本式英語が邪魔する
和製英語について。

4-3 日本人になじみがない表現
have got, I’ve gottaなどの日本人になじみがない表現について。

4-4 知っているから聞ける
英語の電話の対応についてなど。

第5章 聞く練習を実践する
5-1 通勤学習のすすめ

録音した英語を通勤電車の中で聞こう。「話す」より「聞く」方が大事だから英会話学校に行く必要はない。

5-2 インターネットで演説を聞く
政治家の演説は、(1)リズムがはっきりしており、(2)話すスピードが格別速くなく、(3)文章の拡張が高いのでお勧め。

5-3 インターネットでニュースを聞く
政治演説よりも話すスピードが速く、内容も多様なニュースを英語で聞こう。

5-4 オーディオブックで文学作品やビジネス書を聞く
オーディオブックとは本を朗読するCDのこと。

5-5 映画は実用英語の勉強教材として適切か
スラングの少ないもの以外は勧められない。

第6章 TOEIC征服法
6-1 TOEICとは

TOEICについて概観している。

6-2 何がテストされるか
TOEICのテスト内容について述べられている。

6-3 どう準備すればよいか
TOEICで高得点をとるために話す練習と書く練習はしなくてよい。英会話学校に行っても時間の無駄である。リスニングはゆっくりと話される正しい英語を 正確に聞き取れるようになればよい。スラングが使われ早口の映画の英語は教材としてふさわしくない。自分が興味をもてるものやニュース英語を教材として使 おう。「TOEIC攻略本」という類の本は無味乾燥で面白くないので使わなくてもよい。

6-4 TOEICさえできればOKか?
必 要条件であっても十分条件ではない。ある程度スコアがとれるようになったら、TOEIC対策ばかりの英語学習はやめるべきだ。TOEICでテストされてい るのは、義務教育修了程度の言語能力である。高等教育終了後の言語能力を高めるためには自分の専門分野の英語学習をすべきである。

第7章 私は英語をどう勉強してきたか
7-1 中学生のときに見つけた丸暗記法

丸暗記法についての話。

7-2 アメリカ留学
専門(経済学)の英語はわかるのに、生活の英語、正式ではない英語の難しさが語られている。

7-3 帰国後に英語を勉強
アメリカから帰国後の英語の勉強について。いまでも映画の英語と正式な英語のライティングは難しいと感じるそうである。

4月 22, 2015 · Pukuro · 4 Comments
Posted in: ■英語学習法

4 Responses

  1. ぶよよん - 5月 2, 2016

    聞ければ話せるって本当ですか?これは驚きです。

    会話表現集の例文を何千も暗記する方が多くて、凄いなあと思っています。これについて、Pukuroさんは、どう思われますか?いろんな表現を知っているのがいいんでしょうけど、暗記した表現が、会話の中で、そのまま使えるわけではないので悩みます。。

  2. Pukuro - 5月 2, 2016

    「聞ければ話せる」よりも「聞けなければ話せない」の方が正しいのかもしれませんね。

    会話表現はまじめに勉強したことがないのでよくはわかりませんが、「同じことについていろんな表現の仕方を覚える」という学習は、けっこう時間の無駄になります。ほとんどすべてのことについて英語で表現できる人であればそういう学習もよいのでしょうが、英語学習をしている日本人のほとんど全員は、「英語で話そうとするとうまく表現ができなくて話がつまることがある」でしょう。だったら、すでに1のものを2や3に増やす前に0を1にする方がはるかに大事だと思います。例えば、病気の名前、内臓の名前、体の部位の名前を知らないと、病気の話題になった時にすぐ話がつまります。

  3. ぶよよん - 5月 3, 2016

    なるほど。有益なご意見ありがとうございます。

    Pukuroさんは口語表現集の暗記にはあまり賛成されないという事でしょうか?スピーキング能力のために多くの学習者は暗記にいそしんでいるんですが。

    たしか斉藤淳先生のtwitterに3時間くらいの口語のセリフとドキュメンタリーを暗記するみたいなことが書かれてありましたが、どう思われますか?

  4. Pukuro - 5月 3, 2016

    「3時間くらいの口語のセリフとドキュメンタリー」は「会話表現集の例文」とは異なるでしょう。

    斉藤先生の主張について疑問点があったら斎藤先生当人に尋ねた方が有益だと思います。

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